田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

夕日の中の理沙子 35   麻屋与志夫

2008-12-10 07:48:41 | Weblog
きのう、ポストにポトンとコウジから手紙がきた。

白い角封筒だ。  

わたしには予感があった。 

かならず、きょうあたり、コウジかられんらくあり。

恋する少女は勘が鋭くなるんだから。

彼のことなら、彼がすることなら。

離れていたってわかっちゃうんだからね。

あれから、一週間もすぎているのだ。

永遠のとぎが、わたしたちを隔てた感じがする。

手紙をもらって、だから、すぅごく、うれしい。

なつかしい。

あたしたちが神沼にいる……いた。

ことの絶対の証しのために、帝繊橋(睦橋)上でくちづけをした。

コウジはわたしのもの。

それをみんなにみてもらいたかった。

とくに、どこかにいるかれの同性の彼に、みてもらいたかった。

コウジはわたしのものよ。

という、刻印をおす儀式にも似たキス。

あんた、おとこなんだから、コウジのことはきっぱりあきらめなさい。


ほんとは……。

あのとき、コウジは……。

〈死〉をみていたのだとおもう。

すごくおもいつめた目をしていたもの。

火事でなにもかも灰になってしまったコウジ、かわいそう。               
コウジは、放物線をえがいて。

川面に落下するじぶんをかんがえていたんだわ。

はるか、眼下に黒川の流れがあった。

ぶきみな奔流。

巨龍のような、悪魔の鮫肌のようにささくれだった波頭。

飛び込まなければ、もうしわけないような、青く深い流れがあった。

「いま、飛び込めば死ねるよね」  

とわたしはいった。

キスしたあとだった。

いっしょに死んでもいいんだから。

心中してもいいわ。

ほんとはそんなこと口にしては、いけなかったのだ。

倒産した家は、サラ金の取り立に悩まされていた。

らしいのだ。

火事でなにもかも灰になって。




one bite,please. ひと噛みして!! おねがい。
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ああ、快感。
コメント
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