田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

夕日の中の理沙子 3 麻屋与志夫

2008-11-24 22:28:29 | Weblog
なんか、とても心配。  
なにか、思うようにいかないことが起きそうで、不安なんだ。
だからひとりでまくしたてた。     
夢中で学校批判をしていた。
ごめんなさい。    
みなさん。 
いまの、この現実で満足しているみなさん。
ゴメン。
わたしは、ただコウジが悲しいことをいいだすのではないかとこわかったの。
それでしゃべりつづけていた。
校長先生が、中間、期末テストの廃止宣言なんかだしたのは、わたしたちが3年生になった春だったのに……。         
1年もたとうとしている。 
いまごろになって話題になるなんて、マスコミの注目をあびるなんて、おかしい。
……と、ワタシテキには、おもうのだ。 
なんでも、この県の北のほうのある中学でまた暴力事件がおきた。
なん年かまえに、黒磯の女教師刺殺事件があった(そうあのバタフライナイフを一躍有名にした)その隣町でのことらしい。
いっせいに、東京からプレスのひとたちがおしかけてきた。 
暗い事件だけでなく、なにか明るい話題はないかとさがしていた。                                            神沼の東中学で試験撤廃にふみきっている……。
Y紙にスクープ記事がのった。
ほかの新聞もその話題にとびついた。 
はじめから、明るい話題として、とりあげる予定だったみたい。
ありがたいわ。  
それでもってて、日本一有名な中学というわけだ。
日本の中学から定期試験がなくなったら、どうなるのだろうか。
中学生活は天国だわねぇ。  
ホントカシラ???
わかんない。   
わたしみたいにコウジとの♡でオツムがいっぱいの女のこにわかるわけないジャン。 
でも世間的には、日本の教育界でいちばんすすんでいる新教育の実験校。
5★の中学なんだから。
マスコミの注目がこの神沼に集まっている。
千手山公園の観覧車は「恋空」のロケで有名になり過ぎだ!!
御殿山球場のスタンドは「ふれふれ少女」のロケ、新垣結衣ちやんのおかげでチョウ有名。
ともかくみんなは、のりきっている。
ノリノリだ。

「そうでしょう。そうよね? コウジ」

トウキョウから毎日プレスのひとたちがおしかけてきている。
校門めがけてカメラとビデオの三脚が並んでいる。
いつも監視されている。
わたしたちがテレビにうつつている。
ばかでかい業務用ビデオカメラ。
ベターカムの、キョダイな一つ目にとらえられないように身をかわすのってけっこうたいへんなんだから。
厚化粧したレポーターのおねえさまがつきつけるマイクから逃げるのってむずかしいのよー。                 
「テスト廃止でどう学校がかわりましたか」
つきつけられたマイクの餌にくらいついて発言でもしたら、あとがたいへんなんだから。
カワュクくびをかしげる。  
ブリッコしてニッコリ逃げるのってむずかしい。
「マジデ、むずかしいのよ。コウジ」
ああ、ダメだぁ。  
こんなことばかりはなしていたら、ますますコウジにきらわれてしまう。
そう、あせっていたのに、話題をかえられない。                 
わたしってバカ女だ。  
ビミョウに悲しくなった。       
あせった。





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夕日の中の理沙子 2  麻屋与志夫

2008-11-24 02:21:05 | Weblog
六本木にでもあるようなシャレタ店。
銀色にコウテングされたアルミ建材とガラスの壁面だけでできている。  
イナカ街に住むわたしたち女子生徒をときめかせてくれる。
マジで東京いる気分にしてくれる。
……というのだ。
せんぱいがいっていた言葉だ。
テニス部のセンパイが「デートにはサイコウヨ」。
と話していたのをきいたこともある。
まさか、わたしがそこへいそいでいるとは……ね。
ソラリスをコウジが指定してくるとはね。
二階のはじめての席。
客はコウジのほかには――。男のひとがひとりだけだった。
そのひと、隅のほうに座っていた。
コーヒーをのみながら、なにかノートに書いていた。
ノートの上をはしるエンピツの音だけがかすかにしていた。
学校のセンセイ?
それともプレスのひとかな。 
ノートから顔をあげた。
わたしは、まともに見つめられてしまった。
ほかの中学の先生だったら、どうしょう。
なにかいわれそう。
ヤバーイかんじ。 
ほかの席はがらあき。  
わたしはまたせてしまったコウジにかわゅく手をふった。
「ごめん、待たせたちゃった」
夕日のさす窓際の席。
「Hi、コウジ。おまたせ」
コウジの返事がもどってこない。
オダーをとりにきたウエトレスにレモネイドをたのんだ。
コウジも斜陽をみていた。
「あのひと、先生じゃないわよね」   
わたしは、隅にいる男のひとを気にしながらはなしだす。
まだすこし息切れがする。 
いつも、おかたい、定番どおりの、はなしばかりしている。
どうして、テレビドラマのような、気のきいたセリフがでないのかしら。
「高校生とサテンにはいったのをみつかると職員室によばれるのよ。だからぁ、あのひと先生かなぁなんて、気にしちゃうのよね」
「ひとの視線なんか、気にするなょ」
「なんたって、いま日本でいちばん、マスコミの注目をあびている、神沼は東中学校! の生徒なんだから」
気にしちゃうのよね。
とつづけようとしたが。
コウジがあまりに真剣な顔しちゃっているので。
やめた。 
テストを廃止してしまった中学。
「そして、わたしはその中学の、これから卒業しようとしている生徒。高校受験を目前にした受験生なのよ」
ちがう。
こんなことを話すために走ってきたわけではない。
はやく、ラブラブモードにきりかえなければ。
とあせればあせるほど……話がそれていく。               
わたしは、コウジのことばを恐れていた。

会うたびに、不安がつのる。  

別れの予感がひたひたとわたしのこころにうちよせる。



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