田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

「空っ風」復活 吸血鬼/浜辺の少女

2008-06-25 16:50:56 | Weblog
6月25日 水曜日
眞吾たちが危険だ。
吸血鬼の群れがまちうけている。
そのまっただなかにつっこもうとしている。
まず初めにかけた。眞吾には通じない。
圏外の表示がでてしまう。
八重子は携帯をうちまくった。
『からっ風』のOGにかけまくった。
登録してある全員に連絡した。
「あんたらのダチにも、みんな先のとがった戦闘用のパイプ持参の招集かけて。連絡できるかぎりのダチに、緊急出動をかけてよ。これは戦争だからね」
自治医大の広い駐車場に『黒髪連合』の精鋭は治療中のものをのこして全員のこっていた。黒く浮かびあがるかれらのバイクのかなたに茫漠とした関東平野がひろがっていた。
遠く国道4号線を車両が光茫をひいて移動していた。
さらに遥か、彼らが戦った石橋の雑木林がみえていた。
眞吾の親戚のもの、ふいに現れてわたしたちを助けてくれた皐隼人と夏子さん……こんどはわたしたちが恩をかえさなければ。
義理が廃れれば、この世は闇よ。
闇につよいは、吸血鬼。
だけどわたしも野州の女。
鬼をたおして、生きていく。
演歌もどきのメロデーが頭にひびく。
八重子はごきげんだ。
八重子は那須山麓のほうに目を転じた。
夜空があかい。小雨をもたらしている雲間に月が赤い。
なにか不吉なことが起きそうな空の色だ。
赤すぎる月だ。
バンと縦にゆれた。
地鳴りがする。
縦揺れ。
地面がつきあがるような地震だ。
揺れは一度だけでおさまった。
地鳴りはつづく。
なにか巨大な獣が、地下で呻いているような薄気味悪いひびき。
いや、竜が目覚めたのかもしれない。
この、関東八州の地下には竜がいる。
それがときどきあばれるのだ。
とジッチャマに囲炉裏ばたで聞いたことがある。
遥か北の大地から縦断してきている那須火山帯で巨大な地竜が蠢きだしたのだ。
北海道は利尻島に端を発している。
東北をとおり那須岳から浅間へ至る。
那須火山帯。
眞吾には伴走をとめられた。
なすこともなく駐車場にたむろしていた。
金次たち仲間のようすを心配していたものたち。
急に活気づいた。
リーゼント。
長ラン。
特攻服
眉をほそくそり……。
80年代最後のつっぱりのイキをのこしている。
全国でもめずらしい。
ここ宇都宮の暴走族。
『黒髪連合』が、携帯をかけまくる。






コメント
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