6月1日 日曜日
吸血鬼/浜辺の少女 56 (小説)
「過激な展開ね」
「デスヨネ」
隼人の応答に夏子がほほ笑む。
隼人は車の窓から外を見ていた。
まだ暮れて間もないので、田園地帯にでても周囲が見渡せる。
ところどころに街灯もついている。
鹿沼の皐道場までは20分とはかからない。
夏子はただぼんやりと景色を見ているわけではない。
むしろ、なにか一生懸命に考えている。
それが、ハンドルを握る隼人にも伝わってくる。
隼人には夏子の内なる声が聞こえている。
(なにかおかしいのよね。……いくらなんでも、おかしい。なにか見おとしているものがある。吸血鬼はもっと強い。なんども戦ってきたが、中途半端であきらめて引いてしまう。吸血鬼はもっと残酷なはずだ。それにRFまかせで鹿人の直属の吸血鬼がでてこない。鹿人はどこにいるの。なにをしているの。わたしたちを牽制しているだけみたい)
「そうかもしれない。夏子の推理は正しいと思う」
隼人は口に出して夏子に応える。
おまえの背におれたちの目があると思え。鬼島に脅かされた。
初めておそわれたのは……ホテル。
リバサイドホテルの屋上だった。
鬼島も田村も本気ではなかった。
夏子はともかく、ぼくのことなど簡単に倒せたはずだ。
そのあとすぐに、暴走族<バンパイァ>の高野との戦いがあった。
夏子の家がおそわれた。
雨野を奪還に大谷の洞窟にのりこんだ。
夜の一族が皐道場に報復した。
そしてきょうの闘争。
なにか腑に落ちない。
はじめから奇妙だ。
だれも知らなかったはずの夏子の帰郷だ。
どうして鬼島と田村が迎え撃つことがてきたのだ。
どうして鹿人がいなかったのだ。
夏子が隼人とあったのは偶然だった。
鬼島と田村がラミヤ、夏子とあったのも偶然だった、のではないか。
まったくの偶然が続いたのだ。
鬼島と田村はホテルの屋上から停車場坂を下ってくる夏子と隼人をみて驚いた。
かれらはホテルの屋上で望遠鏡でも覗いていたのだろう。実地検分?
かれらの視野にふいに忘れられたラミヤ、夏子が偶然はいった。
かれらは偶然とは思わなかった。思えなかった。
屋上でかれらはなにをしていたのか?
首都圏移転反対の綿貫首相が来鹿するのは今夜だ!!
そうだ。狙撃。テロだ。テロ攻撃。狙撃。
ホテルからの狙撃だ。
それで首相の一行が通る停車場坂を検分していたのだ。
その視野に夏子と隼人をとらえたのだ。
スナイパーとしての鬼島と田村は場所と位置確認をしていた。
あまりにもタイミングが悪すぎる。
夏子の注意をほかに向ける。
ただそれだけの目的で襲撃してきたのにちがいない。
「そうよ。わたしもそう確信する。いそぎましょう」
吸血鬼/浜辺の少女 56 (小説)
「過激な展開ね」
「デスヨネ」
隼人の応答に夏子がほほ笑む。
隼人は車の窓から外を見ていた。
まだ暮れて間もないので、田園地帯にでても周囲が見渡せる。
ところどころに街灯もついている。
鹿沼の皐道場までは20分とはかからない。
夏子はただぼんやりと景色を見ているわけではない。
むしろ、なにか一生懸命に考えている。
それが、ハンドルを握る隼人にも伝わってくる。
隼人には夏子の内なる声が聞こえている。
(なにかおかしいのよね。……いくらなんでも、おかしい。なにか見おとしているものがある。吸血鬼はもっと強い。なんども戦ってきたが、中途半端であきらめて引いてしまう。吸血鬼はもっと残酷なはずだ。それにRFまかせで鹿人の直属の吸血鬼がでてこない。鹿人はどこにいるの。なにをしているの。わたしたちを牽制しているだけみたい)
「そうかもしれない。夏子の推理は正しいと思う」
隼人は口に出して夏子に応える。
おまえの背におれたちの目があると思え。鬼島に脅かされた。
初めておそわれたのは……ホテル。
リバサイドホテルの屋上だった。
鬼島も田村も本気ではなかった。
夏子はともかく、ぼくのことなど簡単に倒せたはずだ。
そのあとすぐに、暴走族<バンパイァ>の高野との戦いがあった。
夏子の家がおそわれた。
雨野を奪還に大谷の洞窟にのりこんだ。
夜の一族が皐道場に報復した。
そしてきょうの闘争。
なにか腑に落ちない。
はじめから奇妙だ。
だれも知らなかったはずの夏子の帰郷だ。
どうして鬼島と田村が迎え撃つことがてきたのだ。
どうして鹿人がいなかったのだ。
夏子が隼人とあったのは偶然だった。
鬼島と田村がラミヤ、夏子とあったのも偶然だった、のではないか。
まったくの偶然が続いたのだ。
鬼島と田村はホテルの屋上から停車場坂を下ってくる夏子と隼人をみて驚いた。
かれらはホテルの屋上で望遠鏡でも覗いていたのだろう。実地検分?
かれらの視野にふいに忘れられたラミヤ、夏子が偶然はいった。
かれらは偶然とは思わなかった。思えなかった。
屋上でかれらはなにをしていたのか?
首都圏移転反対の綿貫首相が来鹿するのは今夜だ!!
そうだ。狙撃。テロだ。テロ攻撃。狙撃。
ホテルからの狙撃だ。
それで首相の一行が通る停車場坂を検分していたのだ。
その視野に夏子と隼人をとらえたのだ。
スナイパーとしての鬼島と田村は場所と位置確認をしていた。
あまりにもタイミングが悪すぎる。
夏子の注意をほかに向ける。
ただそれだけの目的で襲撃してきたのにちがいない。
「そうよ。わたしもそう確信する。いそぎましょう」