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最近の旅行記録とともに、以前訪れた場所の写真などを紹介し、見つけた面白いもの・鉄道・化石などについて記します。

古い鉱物標本(その5)

2013年02月14日 | 鉱物・化石組標本
古い鉱物標本(その5)
An old set of mineral specimens: part 5


Fig. 14 標本16-20 scale: 5cm
Specimen 16-20: stalactite, chlorite schist, piemontite schist, talc schist, quartz.

16 鍾乳石 美濃國不破郡赤坂 (岐阜県大垣市赤坂)
金生山にはかつて小規模な石灰洞があった。だから鍾乳石も当然採集できたのだろうが、現在は採掘が進んで難しそう。この標本は「ストロー」と呼ばれる管状のもので、表面に方解石の結晶ができている。鍾乳石といっても、その赤ちゃんのようなもの。私は観光洞には入ったことはあるが、洞窟調査に行ったことがほとんどない。たった一度、平尾台の洞窟に入ったことがあるだけ。洞窟産の哺乳類化石についてはいくつか研究した。写真の標本は、1979年に研究したトウヨウゾウの乳臼歯(KMNH所蔵)で、私としては初めて自分で研究した洞窟産の哺乳類化石。その直前に、滋賀県産の象化石をたくさん見てきていたから、ちょうど文献や知識が整ったころだった。博物館(当時は準備室)に就職して任された最初の標本だったから、赴任してきた新学芸員の知識をテストされたのかも知れない。


Fig.15 初めて研究した象化石(KMNH所蔵) 北九州市平尾台産

鍾乳石の区画になぜか高師小僧がひとつ紛れ込んでいる。豊橋の高師小僧だろうか。父が生前何か高師小僧について調べていた記憶がある。豊橋駅に隣接する新豊橋駅から豊橋鉄道渥美線(2006年9月乗車)に乗ると、5番目の駅が「高師」で、この地名が高師小僧の名の由来。現在は高師緑地以外は住宅地が広がっている。高師小僧は、植物の根の周りに酸化鉄が沈着したもので、全国に産地があるから豊橋の「本家」高師小僧かどうかが判らない。


Fig. 16 紛れ込んでいた高師小僧。産地不詳

17 緑泥片岩 武蔵國秩父郡野上 (埼玉県秩父市野上)
18 紅簾片岩 武蔵國秩父郡金ケ崎 (埼玉県秩父郡皆野町金崎)
19 滑石片岩 武蔵國秩父郡野上 (埼玉県秩父市野上)
この3点は長瀞の変成岩である。1984年に行ったが、変成岩に興味は無いから、県立自然の博物館に行った他は秩父鉄道から見学しただけで、あとは少し南にある中新世の化石産地を見た。長瀞は東京に近いから変成岩研究の中心だったからそこの石を使ったのだろう。長瀞は、国指定の名勝・天然記念物である。仕事で変成岩の採集に行ったのは四国だった。きれいな渓谷で、紅廉片岩などの三波川の変成岩を採集した。場所も年も覚えていない。
20 普通石英 磐城國石川郡石川 (福島県石川郡石川町)
ここから造岩鉱物に入る。石英の標本というのはどこにもある。石川は、鉱物標本の産地として重要・有名で、結晶が大きいことや各種の鉱物が採集できる。1986年に水郡線でこの付近を通過。32番の黒雲母も石川の標本。残念なことにこの組標本には電気石がない。あれば石川の黒い電気石を用いたのかも知れない。
(つづく)

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