OK元学芸員のこだわりデータファイル

最近の旅行記録とともに、以前訪れた場所の写真などを紹介し、見つけた面白いもの・鉄道・化石などについて記します。

古い本 その52 彗星

2021年04月10日 | 50年・60年

 天文現象の中で、日・月食はあらかじめ日時や場所がわかるから、よほど稀な(例えば本土を皆既帯が通るとか)ことでなければ多数の本が出版されたりしない。一方、大きな流星などは突発的だから本にはなりにくい。彗星の回帰は、あらかじめある程度の明るさなどの予想ができ(といっても、結構外れるのだが)しかも今回のハレー彗星などは一般に名前が知られているから、出版の対象となる。また、新規に発見された彗星でも、発見から肉眼で見えるくらいに結構時間があるのでときおり書籍が発行される。

123 ハレー彗星 1985 カバー

 「ハレー彗星1985-86」は平凡社のB6版、246ページで、1985.7.17発行。手元の本は、1985.10.15発行の第4刷。3ヶ月で4刷まで行ったのだから当時の注目度がわかる。著者は草下英明(1924−1991)、科学ジャーナリスト。この回帰が最初に確認されたのは、最接近の1,000日以上前!の1982年10月のこと。これまでに30回近くも出現が歴史上記録されているという「信頼の置ける」彗星だから、準備の期間はたっぷりあった。だからハレー彗星の観測を目的とする人工衛星の打ち上げなどもあって、そのニュースも実際に目で見えるようになる前に気分を盛り上げた。最も接近したのは1986年になってからで、私の記憶では、実際には以前の出現のような大規模な姿を夜空に描くことはなかったが、空を見上げるきっかけにはなった。74年を周期として太陽に近づくのだから、次回は2060年。この周期も「絶妙」で、ほとんどの人類は一度しかチャンスがない。この前の出現は1910年で、その記憶のある人は1986年におそらく80歳以上になっていたことになる。次回は2060年ごろで、私には次がない。

124 彗星、地球へ大接近 1996 カバー

 「彗星、地球へ大接近」は、1996年に接近した百武彗星の本で、1996.3.20に誠文堂新光社から出版されたB5, 177ページの単行本。著者は渡部潤一(1960−)、国立天文台職員などを経て、天文関連の著作がある。百武彗星が最もよく見えたのはこの年の3月下旬だったから、発行された日付はずいぶんギリギリだったことになる。最も発行日付よりも早く書店に並ぶ本はたくさんあって、昨年末の2020.12.22に購入した鉄道関連の本の奥付は「2021.1.20出版」となっていた。「彗星、地球へ大接近」の内表紙の写真は1996.2.22撮影となっていて、すでに彗星の周りにハロが写っているから「引きつけて打った」本なのだろうか。ところでこの写真、大きなミスプリがあって、写真キャプションの見出しに「1966年2月22日の百武彗星」とある。次の行にデータがあって1996年となっているし、この直前に発見された彗星だから間違いはすぐわかるのだが。百武彗星は、1996年1月31日に鹿児島のアマチュア天文家百武裕司さんが発見した。これがよく見える彗星になることが分かるには少し時間がかかったはずだから、本の執筆・発行には1ヶ月ほどしかない。「引きつけて打った」のではなく、「素早く反応した」とする方が良さそう。
 私は、この彗星を肉眼で見ることができた。「長い尾を引いていた」とする人が多いが空の暗いところで観察できたのだろう。職場からの帰宅中に、坂道の、街中ではあるが暗いところで見上げた記憶があって、尾は見えず、ぼんやりとした満月よりも大きな円形の姿だったと記憶している。現在のデジカメなら十分に写すことができたのだろうが、10年ほど早すぎた。

125 ヘール・ボップ彗星がやってくる 1997カバー

 百武彗星の翌年のヘール・ボップ彗星に関する本。誠文堂新光社1997.2.15.発行、B5, 240ページの単行本。著者は前の本と同じ渡部潤一である。
 あまりこの彗星のことを覚えていない。前宣伝に比べて拍子抜けだったのだろうか。

126 これがヘール・ボップ彗星だ!! 1997 カバー

 同じ誠文堂新光社から1997.2.15(前の本と同日)に発行されたA4変形版、127ページの本。「天文ガイド編集部・編」となっている。前の本よりもずっとくだけた本で、それだけに私にとっては面白くなかった。
 次に紹介する2冊はちょっとジャンルが異なるもの。他に入れるところがないので、ここで。

127 しし座流星群を追え! 1998 カバー

 世界文化社1998.11.10発行の[別冊家庭画報]B5版、95ページの本。「しし座流星群を追え!」と題しているが、この流星群に関する記述は少なくて、他の天文現象を広く扱っている。月食・彗星・隕石・隕石孔・近日中の天文現象 などなど、初歩的な記述が多い。この流星群の記憶もほとんどない。大流星群といっても、一時間に60個、つまり1分間に平均1個ぐらいだと、「多かったな」という記憶に残るがそれ以下だと感激しないというのが実際のところ。一つの視野に複数個が流れる、というような流星群は見たことがない。私が夜明けに(流星は夜明けに多い)見ないのと都会からしか見ていないというズボラな似非天文ファンだからやむを得ない。
 次はまた違うジャンル。印刷物としての稀少性があるので挙げる。

128 月をめざすアポロ計画 1969 表紙

 これは書籍ではなくパンフレットのようなもの。1969.4.15にアメリカ大使館広報文化局報道出版部発行のB5、表紙を入れて16ページの冊子。どうやって手に入れたのかは記憶がない。発行の3ヶ月後の1969.7.16にアポロ11号によってアームストロング船長らが月面に降りたのだから、その直前の宣伝紙である。もう50年以上前なのだ。
 内容は表紙写真が月面の地平線(月平線?)上にかかる地球で、有名な写真。たぶん月を10周して帰ってきたアポロ8号の撮ったもの。本文は「人間生活に恩恵をもたらす宇宙研究」から始まる。膨大な予算を獲得するためにこういった宣伝を日本でまで行ったのだろう。すでに11号の乗員も、そして月に降りる最初の飛行士も決まっていて顔写真が並んでいる。

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