OK元学芸員のこだわりデータファイル

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古い本 その53 木星と彗星

2021年04月16日 | 50年・60年
 1994年の7月に彗星が木星と衝突することが予報された。この彗星は、1993年3月に見出されたものだが、よく見ると一つの彗星ではなく、多くの核が列を作って移動しているものだった。そして軌道計算の結果、木星と衝突するというのだ。実際にこの衝突は7月17日に起こったのだが、軌道計算が進むと地球から見えない側にぶつかることが分かった。そのために、衝突そのものが見えるわけではなく、次の本の出版時にはアマチュアの小さな望遠鏡では何も見えない可能性が高いとされていた。

129 ジュピター・クラッシュ 1994

 この本「ジュピター・クラッシュ」は、衝突1ヶ月ほど前の1994.6.15に発行された。「朝日ワンテーママガジン」という朝日新聞社の雑誌で、A5、85ページの本である。宮本 貢・編集となっている。著者は9名、ほかにイラスト2名が記されている。この頃までにわかっていることや、衝突に際して観測されそうなこと、それに続いて起こる出来事が予想されているが、はっきり言ってそれほど当たっていない。

130 Jupiter Impact CD 1995

 これは本ではなく、画像を収録したCDで、「パシフィック・ハイテック」というところから1995年1月に発売された。言葉遊びではないが、「インパクト」のあるものが多数入っている、と記憶している。
 私が現在使っているデスクトップでも、ノートパソコンでもCDを見るときには、外付けのCDドライブをUSBに繋ぐことになる。これの発売された頃はパソコン本体に必ずCDドライブが付いていたのを思い出す。「アプリケーションを購入する」というのは「CDを買ってくる」ことだった。私の持っているCDドライブは、USBポートにつなぐだけという簡易なもの。このブログを記す際につないでみたが、デスクトップの方はCDドライブが対応しない。電力の問題があるようだ。ノートの方では動いたので、とりあえず画像の一部をUSBメモリーに移して、デスクトップにコピーしてみた。一応見えるが解像度が低いから、なにかサムネイルのようなものを取り込んだのかもしれない。またやってみよう。

131 彗星の木星衝突を追って 1995 カバー

 シューメーカー・レヴィー彗星9の木星衝突に関する本は、衝突後も出版された。専門的な論文ではなく一般書が、こういった一過性の出来事に関して発行されるのはそんなに多くない。前回このブログでは彗星に関する本を幾つか挙げたが、アマチュア天文好きに人気のある彗星でも、事前の出版はあっても「結果報告」のような本は出版されることが少ない。天文好きを対象とする雑誌や次年度の天文年間などで短い記事がある程度である。「彗星の木星衝突を追って」は、出来事の後で結果を記している。1994年7月の衝突後8ヶ月後(1995.3.10)誠文堂新光社から発行されたB6、175ページの単行本。著者は彗星に関して多くの一般向けの本を書いている渡辺潤一で、時系列でいうとこのとき(1994年)のマスコミ対応などで「名を上げて」、百武彗星やヘール・ボップ彗星の本を出版された、ということ。
 では、衝突前の「ジュピター・クラッシュ」の本で予想された事項がどうなったのだろうか。まず、衝突そのものはもう少しというところではあるが、向こう側で起こった。これはもちろん予想通り。その際の閃光は考えられていたよりも強い光が木星の縁に見えた。衝突の「キノコ雲」は見えないと予想されたが、ハッブル望遠鏡他で観測できた。これは人工衛星であるハッブルから見たのだから、「はずれ」ではない。閃光が木星の大きな衛星を照らして、それが見えるのではなかという予想は、わずかにしか検出されなかったから「ややはずれ」。赤外線とか専門的な観測は大きな成果を挙げた。これは観測自体が予想に基づいて行われたわけなので、「あたり」。一番予想外れだったのは、裏側でおこった衝突の痕が、木星の自転でこちらを向いた時に大きな模様として長く残ったこと。

131-2 彗星の木星衝突を追って 1995 巻頭写真の中の1枚

 他に、衝突で巻き上げられた雲からいろいろな元素・分子が検出されたそうだが、衝突で起こった振動(木星震?)を観測するという話はどうなったのだろうか。
 ややこしいのは、上の写真の衝突痕の位置関係がぶつかる前の彗星破片の順序(前-木星に近い方-からアルファベット順)と違うこと。というのは木星の自転は地球よりも早くて、約10時間で回る。一方衝突は先頭のA核が17日午前6時前、最後尾のW核は22日の17時と、数日に渡るから、その間に木星は10回以上自転したことになる。木星の自転がこのように早いために、衝突の痕跡が衝突後速やかにこっち側に出てきてくれたのだ。衝突の大きさは、その前の核の明るさと必ずしも比例しなかったようだ。

131-3 彗星の木星衝突を追って 1995 91ページの写真

 この彗星は、遡った軌道計算によると1992年の7月に木星に接近して、そこで強い潮汐力によって分裂したらしいという。分裂したら、ほぼ軌道上に並ぶんですね。その写真が掲載されている。ほぼ一直線上に、少なくとも9個の核が並んでいる。軌道方向の運動量は分裂時の加速度と比べて非常に大きいということだろうか。わかりません。運動量と加速度を比較するような非科学的記述ですみません。彗星の特徴である「尾」が左の方向に流れているのがわずかに見える。彗星群は進行方向に並んでいるから、「尾」がそれとは違う方向に向いていることがよくわかる。

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