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古い本 その54 地磁気・太陽

2021年04月22日 | 50年・60年

 地磁気などの地球物理学関連の入門書を幾つか挙げる。

132 なぜ磁石は北をさす 1970 カバー

 まず、古い本から。「なぜ磁石は北をさす」は、ブルーバックス(講談社)で、1970.1.16発行、255ページ。著者は力武常次(1921−2004)、東大の地球物理学者。副題があって「地球電磁気学入門」となっている。磁石の話から始まって、地球の核のダイナモ説が解説されているが、よくわからない。地磁気の逆転に関しても十分なデータが蓄積されるのはこれより後のこと。この頃までに磁化の比較的強い火山岩の測定はされていたが、正確な年代ごとの地磁気が復元されるためには堆積岩の帯磁が簡単に測定でき、なおかつ絶対年代についてもデータが取れるようになってから。

133 地磁気の逆転 2019 カバー

 「地磁気の逆転」は光文社2019.2.25発行のB5版単行本、346ページ。翻訳本で、原著者はAlanna Mitchell(カナダの科学ジャーナリスト)、原題は「The Spinning Magnet: The Force That Created the Modern World – and Could Destroy It」(回転する磁石:現代の世界を作り出した、そして破壊しうる力)というもので、2018年に出版された。日本語翻訳は熊谷玲美、日本版にも副題があって「地球最大の謎に挑んだ科学者たち、そして何が起こるのか」というもの。原題には、将来起こるであろう地磁気の逆転のときの危機を警告した副題が付いているが、日本版副題にはそういう危機感がない。本文は、第一部の地磁気の逆転と言う概念を提唱したブリュン(Bernard Brunhes: フランス。日本では普通ブリュンヌと表記することが多い)の研究した地層を見に行く話から始まる。地磁気の観測や経年変化などの詳しい解説があり、そして巻末には地磁気の逆転を基にした地質時代名の変遷や命名に移り、チバニアンの命名という日本でも興味を持たれたニュースに及ぶ。それなら松山基範の話ももう少し詳しく記してほしかったなあ。

133-2 松山博士が逆転期を見出した玄武洞 1968.3.8


134 太陽に何が起きているか 2013 カバー

 地磁気の次の反転時はいつなのか? そしてその時に何が起こるのかは大問題なのだが、同時に太陽からのいろいろな影響の危険性が最近になって注目されてきた。「太陽に何が起きているか」は文春文庫2013.1.20発行の204ページの本。著者は常田佐久(つねだ・さく)(1954−)は東京大学の天文学者(太陽物理学)。この本は、2006年に打ち上げられた太陽観測衛星「ひので」の成果を紹介するもの。私たちにとって太陽は安定した存在であるが、近年の観測によって大規模なものを含めて変動の多いものであることがわかってきた。地球軌道付近における面積あたりの太陽放射のエネルギーを「太陽定数」と呼ぶが、どこが「定数」だったのだ、という時代が来るかもしれない。

135 太陽は地球と人類にどう影響を与えているか 2019 カバー

 「太陽は地球と人類にどう影響を与えているか」は光文社新書2019.6.30初版発行、253ページ。手元の本は第2刷(2019.7.15)。
 太陽のおこす出来事についてさらに危険性を強調したのが、この本。歴史的に見て地球に多くの影響を与えた変動の記録が記されている。例えば、1967年のフレアは、太陽から15時間程度で地球に到達し、その影響で当時のベトナム戦争で敷設された機雷が多数誤爆発したという。機雷は接近した船舶による磁気を感じるようになっているのだが、フレアの起こした磁気変化を機雷が感じ取ったらしい。
 1859年に起こった太陽嵐は、世界にほとんど電気器具というものがなかったから損害はあまりなかったが、現在起こればその影響は膨大だろう。人工衛星は大気圏の変化で軌道を狂わせるとか、積載している電子機器が破壊されるといったことがおこりそうである。とくに、もし地磁気が反転などのために弱くなっている時には、地球の「磁気シールド」が非常に弱くなるだろうから、それと重なり合えば大変なことが起こる。GPSも働かないし、地上のパソコンも破壊されそう。自動車の無人運転などの突然の停止も考えられ、対処していなければ大惨事となろう。
 最近の本の中では面白く読んだものの一つ。

136 ベテルギウスの超新星爆発 2011 カバー

 ちょっと別の話題だがここに含めよう。「ベテルギウスの超新星爆発」、副題「加速膨張する宇宙の発見」は幻冬舎新書で2011.11.30初版発行、221ページ。手元の本は第3刷(2011.12.25)。著者は野本陽代(サイエンスライター)。第1章だけがベテルギウスの挙動に関する記事で、たった25ページほど。その話題に興味があった私としては、騙されたような気がした。それだからこういう副題が付いていたのかと、今になって気付いた次第である。副題のように最近の宇宙論に関わることが主に(ページ数では9割近い)記されている。帯に書かれている「2012年、人類史上最大の天体ショーが始まる!?」というセンセーショナルなキャッチコピーが虚しい。2012年どころか2020年が終わってもベテルギウスは大きな変化を起こしていない。2020年の末の研究グループの発表でも「爆発はまだ遠い」としている。2019年には急激な減光が観測されたが、どうやら地球との間に向かって何かが放出されたことによって光が妨げられたということらしい。

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