古希を迎えたばかりの長姉と食事をするため、姉夫婦6人で和食がおいしいと評判の隣町にある店に行った。時間が早かったせいか、お客は我々だけであった。
写真入りの数あるメニューに迷った挙句、全員一致で刺身定食を頼んだ。しばらく待った後、大きな膳が運ばれてきた。
50歳そこそこに見える色白の美しい女店員が、「ご飯が手前になるように膳を置いてください」と、気さくに話しかけながらテーブルに置いていく。
きときとに活きた刺身に、うなぎの蒲焼・肉団子・吸い物と、評判にたがわぬおいしい料理であった。
食べ終わったあと呼び鈴を鳴らし、お茶の追加を頼んだ。その時「この定食に、コーヒーは付いていないのですか?」と長姉が訊いた。
「お昼の定食には付いているのですが、夜は付いていませんのよ」と申し訳なさそうに答える。
「とてもおいしかったですよ。ところで先ほどから思っていたのですが、きれいな方ですねぇ」と姉が付け加えた。
「そんなことありません。もう歳ですから」「そんなことないでしょう」「いいえ、もう還暦です」「え?本当ですか。とてもそんなには見えませんよ」「いえ、還暦です。そう言われるお客さんもおきれいな方ですね」「そんなあ~」
女客3人と店員がお互いをほめ合う時間がしばし流れる。話を聞いてみると、店員と思っていた女性は店の主人で、私と同じ町の出身者であった。
追加のお茶も飲み終え、腹具合も落ち着いた。帰る段になり、靴を履くために土間に下りた。
その時であった。「ちょっと待ってくださ~い。今、コーヒーを淹れていますので~」と、女主人が大きな声で叫ぶ。
きびすを返して6人は又座敷に座りなおし、声を押し殺して笑った。思いもかけず、女客3人のリップサービスが功を奏した。
しかしこれは、リップサービスというよりか、本当のことを言ったまでであるが、それに女将が素直に応えてくれたものであった。
こうして、世間知らずの私は、長姉の古希を祝う会食の席で目の当たりに、濃き人生勉強をした夕であった。ほめれば見事に「人は動いた」一幕であった。
(写真は、身体全体でサービスにこれ努める「ハートリー」)
写真入りの数あるメニューに迷った挙句、全員一致で刺身定食を頼んだ。しばらく待った後、大きな膳が運ばれてきた。
50歳そこそこに見える色白の美しい女店員が、「ご飯が手前になるように膳を置いてください」と、気さくに話しかけながらテーブルに置いていく。
きときとに活きた刺身に、うなぎの蒲焼・肉団子・吸い物と、評判にたがわぬおいしい料理であった。
食べ終わったあと呼び鈴を鳴らし、お茶の追加を頼んだ。その時「この定食に、コーヒーは付いていないのですか?」と長姉が訊いた。
「お昼の定食には付いているのですが、夜は付いていませんのよ」と申し訳なさそうに答える。
「とてもおいしかったですよ。ところで先ほどから思っていたのですが、きれいな方ですねぇ」と姉が付け加えた。
「そんなことありません。もう歳ですから」「そんなことないでしょう」「いいえ、もう還暦です」「え?本当ですか。とてもそんなには見えませんよ」「いえ、還暦です。そう言われるお客さんもおきれいな方ですね」「そんなあ~」
女客3人と店員がお互いをほめ合う時間がしばし流れる。話を聞いてみると、店員と思っていた女性は店の主人で、私と同じ町の出身者であった。
追加のお茶も飲み終え、腹具合も落ち着いた。帰る段になり、靴を履くために土間に下りた。
その時であった。「ちょっと待ってくださ~い。今、コーヒーを淹れていますので~」と、女主人が大きな声で叫ぶ。
きびすを返して6人は又座敷に座りなおし、声を押し殺して笑った。思いもかけず、女客3人のリップサービスが功を奏した。
しかしこれは、リップサービスというよりか、本当のことを言ったまでであるが、それに女将が素直に応えてくれたものであった。
こうして、世間知らずの私は、長姉の古希を祝う会食の席で目の当たりに、濃き人生勉強をした夕であった。ほめれば見事に「人は動いた」一幕であった。
(写真は、身体全体でサービスにこれ努める「ハートリー」)