写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

つり紀行

2006年05月23日 | 生活・ニュース


 「お~い、釣りにいってみないか?」10日前、中学校の同級生だった男から電話がかかってきた。

 他に男女5人の同級生にも声を掛けているという。回遊魚のごとく、毎日何かもの珍しいことがないかと探し回っている私は、一も二もなくOKと返事をした。

 決行の日、朝5時に起きた。雨の日が続いていたが、この日は快晴であった。前日に用意していた釣り道具を手に、待ち合わせ場所に向った。

 フロントガラスの正面に、少し霞んだオレンジ色の朝日を見ながら走る。一瞬、見慣れた夕日と見まがうほどに赤い。誰もいない朝は爽やかで気持ちよい。

 男4人、女3人が瀬戸の海に向け出発した。30分も走るともう目的地だ。幹事が手配していてくれた渡船が迎えてくれる。
 
 1km沖合いにある防波堤に降ろされた。まだ朝7時半。午後2時まで釣るという。う~ん、なかなかの持久戦だ。

 いよいよ戦闘開始。小さな籠にオキアミを詰めてのサビキ釣りをする。狙う獲物は、メバルとアジだ。

 持って行った大きなアイスボックスに腰をかけ、ボックス一杯入れて帰ろうと気持ちは高ぶる。

 1時間もすると、6本付けた針に小さなアジ・メバルがかかり始めた。釣堀のように魚が泳いでいるのがよく見える。たちまち入れ食い状態になってきた。

 釣れるわ、釣れる。大きいのはいない。幼児ばかりだが、何とか食べられる大きさだ。時々、中くらいの大きさのものがかかる。

 昼前、幹事がアジの刺身を作リはじめた。40匹をさばいたという。昼食のおにぎりを食べながら、この刺身を全員で頂いた。大空の下、うまいの1語であった。

 ゆったり大きくゆれる海。四国・松山行きのフェリーが音もなく行き交う。時に、背後の琴石山を仰ぎながら7時間が過ぎた。

 釣っても釣っても上がってくる魚に別れを告げ、迎えの船に移った。それほどの日照でもなかったのに、顔が火照る。

 このところしばらく経験していない、快い疲労感をおぼえながら帰路に着いた。釣りはもちろん良かったが、やっぱり友と旧交を暖めたことが何よりの1日であった。

 男女7人釣り物語。幹事の男もアジ釣りとは、なかなかアジな企画をしてくれたものだ。ありがとたい。
(写真は、4部作「朝日・獲物・刺身・柳井港」:高い峰は「琴石山」)