写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

ワル知恵

2006年05月28日 | 生活・ニュース
 このたび社保庁の年金不正免除・猶予という問題があからさまになった。各地の社保事務所で、年金の納付率を引き上げるために不正な手続きが行われたという。

 社保庁はかつて数々の不祥事に揺れ、2年前、民間から迎えたトップのもとで出直しを図ってきていたはずである。

 この社保庁からの納付率アップの厳しい指示に対して、各社保事務局はノルマ達成に向けて見事な1計を企てた。

 普通の民間会社であれば、このようなときには素直に、納付率である分数の分子を大きくするにはどうしたら良いかを必死に考えるに違いない。

 ところが社保事務局は違った。私のような一般人が考えも及ばない妙案を思いついた。

 額に汗して分子を増やして歩くことを初めからあきらめて、なんと机上で不正に分母を小さくすることにより、みかけの納付率という数字のアップを図ったのである。

 お見事というしかない。昔見た、勧善懲悪時代劇の「お主もワルよのう」の悪代官さながらの手さばきである。

 新聞紙上では「組織の保身」「成果を焦る」「安易に走る」などの非難の言葉が踊っている。当然である。

 これでは納付率という数字がアップしただけで、実質は何も変わってはいない。単に分母を小さくして数字的に納付率を上げることくらいなら誰でも出来る。

 こんなワル知恵を考える暇があったら、少しでも実質的なことに汗を流してほしい。職員は家に帰り、わが子にことの顛末をどう説明するのだろうか。

 何ごとも、上から指示があり努力をしさえすれば、それが達成できるとは限らないことは分かっている。

 指示を出す人受ける人、よく議論して、真に国民のためになる行動をとるために行政職員はある。本質から目を逸らさずにがんばってほしい。

 分子である納付された国民年金は、国民の大切なブンシンともいえる。分母が全額分子となるよう、言われなくとも自らやるのが我々国民の義務である。

 このところ、納付率分子・靖国分祀・盗用文士とブンシの話題が多い。「世の中に蚊ほどうるさきものはなし ブンシブンシといふて夜も寝られず」か。
(写真は、分数の分子に見える鎌倉・瑞泉寺で求めた「土人形」)