写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

釣り三昧

2006年05月25日 | 生活・ニュース
 連休が明けてから雨が続いた。梅雨前の5月の後半ころに降る長雨を「卯の花腐し」ということを新聞のコラムを読んで知った。

 一転して今日は朝から初夏のような日差しで、暑さを感じる。朝食を終えた。特に何かをしなければならないという予定はない。

 「今日はどうしますか? 釣りに行って見ない?」。妻の口から思いがけない言葉が発せられた。

 つい先日、幼馴染に誘われてアジ・メバル釣りに連れて行ってもらったばかりである。

 小さい獲物ではあったが、から揚げと南蛮漬けでおいしく頂いた。妻は、その味が忘れられなくて、今日釣りに行こうと誘ってきた。

 ロードスターに乗り、20km先にある由宇の海岸に向け出発した。途中の釣具店で、仕掛け・浮き・釣り針・オキアミ・アミ籠を買う。

 由宇に着いた。釣具店で教えてもらった通り、国道を外れ山陽線の踏切を超え目的の岸壁に出た。

 防波堤の突端に赤い灯台がある。12時過ぎの厳しい日差しを、灯台の陰に座り、おにぎりをほおばりながらやり過ごす。

 いよいよ独力で戦闘開始だ。先日習った通りに仕掛けを作った。浮き下の長さも、水深の見当をつけて調整してみる。

 籠にオキアミを割り箸で山盛り入れた。第1投を思い切り遠くに投げた。さびいてみるが当たりはない。

 数回試みるが同じことの繰り返しであった。今度は、立っている防波堤の真下に針を落としてみた。

 すると、1匹メバルの子供がかかってきた。初めての獲物としてクーラーに収めた。次をやってみた。また釣れた。次もまた釣れる。

 急に忙しくなってきた。入れるたびに1匹が上がる。どれもこれもそろえたように同じ大きさ、いや同じ小ささである。

 しかし、南蛮漬けにすれば十分においしく食べられることを知っている。2人分として買ったオキアミがなくなったとき、25匹がクーラーに収まっていた。

 夕食には予定通りよく滲みた南蛮漬けが出てきた。平均体長10cm。それでも十分にビールの肴になってくれた。

 メバルのことををネットで調べてみた。「フサカサゴ科の海水魚。沿岸の岩礁にすむ。全長約30cm。目が大きい」と書いてある。

 私が釣ったメバルは確かに目は大きかったが、いかにしても体長は短かすぎる。児童虐待といわれる前に、今しばらくはメバル釣りを控えることにする。
   (写真は、由宇海岸3時間の「メバルの釣果」) 

レトロな食堂

2006年05月24日 | 食事・食べ物・飲み物
 昭和20年代、私がまだ小学生のころである。母と買いものに行くといえば、錦帯橋近くの銀座街、それとも反対方向にある今津町の商店街のどちらかであった。

 今津町で買いものした時のお昼時、たった1軒しかない町の食堂で食べて帰ることがあった。当時のわが家では滅多にない外食であった。

 私が子供のころからあるその食堂が、今も同じ所、同じ建物でやっていることを幼なじみから聞いていた。
 
 今日、うちの奥様は「お昼はお願いしま~す」と、明るい大きな声で言いながら、お出かけになった。

 至福だと思っていたひとりの時間も、毎度ともなると、つぶすのに何か工夫がいる。車の任意保険の継続手続きに行く用事を思い出した。

 しばらく動かしていない、直したばかりのミニバイクにまたがり出かけた。途中ヘルメットの下から、12時のサイレンが吹きあげてきた。

 「今日は、外食だ」方針はきまった。思い出の食堂に向け、ハンドルを切った。今津町の小さな路地に入り、「山綱食堂」と書いた看板の前でとまった。

 50数年ぶりに暖簾をくぐって入った。店の様子は何も覚えてはいない。5卓の古いテーブルと、黒光りした5人がけのカウンターがある。先客が4人いた。

 ラーメン・うどん・丼のメニューが壁に貼ってある。ガラスケースの中には、いなりと一品料理が並べてある。よくある大衆食堂の風景だ。

 450円のラーメンを頼んだ。塩味のすっきりしたおいしいラーメンだと評価した。町のこんな片隅の食堂にいても、知り合いの夫婦と出会った。

 食べ終った時に言葉をかわし、ひと笑いして外に出たとき、勘定を払っていないことに気が付いた。あわてて引き返し支払いを済ませる。

 外に出たとき、「忘れ物ですよ~」と中から声がする。今度は私の命、デジカメを置き忘れていた。

 ひとつのことをすると、もうひとつのことを忘れる。いけないことだ。これを書いている今、「今日の昼飯は、どこで何を食ったんだっけ?」のありさま。

 「歴史ある、山綱食堂のラーメンですよ」。もうひとりの、しっかりした私がそっと教えてくれた。

 「3丁目の夕日」を彷彿とさせるレトロな客の行くレトロな食堂が、どっこいこんなところにまだあった。
  (写真は、昔ながらの製麺所兼業の「山綱食堂」)

つり紀行

2006年05月23日 | 生活・ニュース


 「お~い、釣りにいってみないか?」10日前、中学校の同級生だった男から電話がかかってきた。

 他に男女5人の同級生にも声を掛けているという。回遊魚のごとく、毎日何かもの珍しいことがないかと探し回っている私は、一も二もなくOKと返事をした。

 決行の日、朝5時に起きた。雨の日が続いていたが、この日は快晴であった。前日に用意していた釣り道具を手に、待ち合わせ場所に向った。

 フロントガラスの正面に、少し霞んだオレンジ色の朝日を見ながら走る。一瞬、見慣れた夕日と見まがうほどに赤い。誰もいない朝は爽やかで気持ちよい。

 男4人、女3人が瀬戸の海に向け出発した。30分も走るともう目的地だ。幹事が手配していてくれた渡船が迎えてくれる。
 
 1km沖合いにある防波堤に降ろされた。まだ朝7時半。午後2時まで釣るという。う~ん、なかなかの持久戦だ。

 いよいよ戦闘開始。小さな籠にオキアミを詰めてのサビキ釣りをする。狙う獲物は、メバルとアジだ。

 持って行った大きなアイスボックスに腰をかけ、ボックス一杯入れて帰ろうと気持ちは高ぶる。

 1時間もすると、6本付けた針に小さなアジ・メバルがかかり始めた。釣堀のように魚が泳いでいるのがよく見える。たちまち入れ食い状態になってきた。

 釣れるわ、釣れる。大きいのはいない。幼児ばかりだが、何とか食べられる大きさだ。時々、中くらいの大きさのものがかかる。

 昼前、幹事がアジの刺身を作リはじめた。40匹をさばいたという。昼食のおにぎりを食べながら、この刺身を全員で頂いた。大空の下、うまいの1語であった。

 ゆったり大きくゆれる海。四国・松山行きのフェリーが音もなく行き交う。時に、背後の琴石山を仰ぎながら7時間が過ぎた。

 釣っても釣っても上がってくる魚に別れを告げ、迎えの船に移った。それほどの日照でもなかったのに、顔が火照る。

 このところしばらく経験していない、快い疲労感をおぼえながら帰路に着いた。釣りはもちろん良かったが、やっぱり友と旧交を暖めたことが何よりの1日であった。

 男女7人釣り物語。幹事の男もアジ釣りとは、なかなかアジな企画をしてくれたものだ。ありがとたい。
(写真は、4部作「朝日・獲物・刺身・柳井港」:高い峰は「琴石山」)

見守り犬

2006年05月21日 | 生活・ニュース
 地域のひとり暮らしをしているお年寄りを訪ね、お役に立てることがないかと見回るボランティアに参加した。

 各人に、万が一の時の連絡先を確認して歩いた。暗い部屋の奥から小さな紙切れを持ってきて見せてくれる。

 遠方に住んでいる息子や娘の電話番号が鉛筆で書いてある。親戚もなく連絡先のない人がいた。

「何かの時には私の所へ電話してください」と優しく伝える。

 一本の線でつながった電話の向こうに、いつも自分のことを思っていてくれる誰かがいることの心強さ。

 それと同時に、いない人への心配りを痛感する見回りであった。
(写真は、我が家の見守り犬「ハートリー」万が一の時にはよろしく)

オケラ

2006年05月20日 | 季節・自然・植物
 ミニバイクのアクセル・ケーブルが固着したため、自分で取り替えることにした。発注していたケーブルが入荷したのを取りに行き、修理を終えた。

 すべてを復旧したと思ったが、小さなビスが3本残った。主要なボルトはすべて締めた。大したことではないと楽観的に考え、試運転をした。

 思い通りにアクセルを回すことが出来、よく走ってくれる。無事に修理は完了し、妻に対しての面目は立てることが出来た。

 作業を終え道具を片付けていたとき、腰を下ろしていたレンガを持ち上げた。そのレンガの下の地面に、いく筋かの細い溝が走っている。

 行き止まりの溝の末端に、来し方を向いて1匹の虫が潜んでいた。体長3cmくらいのケラである。モグラのように土の中にトンネルを掘って棲んでいる。

 前足はまるでシャベルのようになっていて、土を掘るのに適している。大きな後ろ羽をもち、空を飛ぶこともできるし、泳ぐこともできるすごい昆虫だ。

 子供のころには、よく捕まえて遊んでいた。大人になってから見た覚えはない。何十年ぶりに出会った昆虫である。

 めがねをづり上げて正面から見ると、愛嬌のある面白い顔をしていた。身近なところに、いろいろな生き物が生息している。我が家の庭は、まだまだ自然に恵まれているようだ。

 ところで、ケラと言えば「オケラになる」という言葉を思い浮かべる。ケラを前から見ると万歳をしているように見えるため、一文無しでお手上げ状態になったことをいうらしい。かわいそうな例えに使われる昆虫ではある。

 バイクの修理も一時打つ手はオケラ状態、まさにお手上げ状態であったが、気を持ち直して再挑戦の結果、無事に再生させることが出来た。

 ケラケラ。♪ケ・セラ~セラ~ なるようになれ~♪ なるようになった。カラオケで、ドリス・デイの古い歌でも歌ってみるか。
   (写真は、生まれながらお手上げ状態の「オケラ君」)