のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

田からのものは宝物

2007年01月29日 | 農のあれこれ
27と28日、宇都宮市で行われたNPO法人民間稲作研究所創立10周年記念講演およびシンポジウムに参加してきました。200名余りが参加していました。

このイベントは三部構成。

第1部のシンポジウムでは、農家と研究者のパネラーがそれぞれの立場から「除草剤を使わないイネづくり」から「いのち育む有機稲作」へ進展してきた民間稲作研究所のこの10年間の歩みを紹介しました。

山形県のHさんは、「水田雑草と戦う」のではなく「雑草を眠らせる」農法として、慣行の乾田理論に対する水のある生態系である「雪水田んぼ」を提案しました。

栃木県のTさんは、「除草」でも「抑草」でもなく有機物として雑草を生かす「増草」による有機稲作を提案。工夫するには目一杯の農業では無理ともいいます。

兵庫県のYさんは、有機稲作の農法的なノウハウが蓄積されてきたとはいえ、一つの農法によりすべての田んぼで有機稲作が可能になるのではなくスランプに直面することも事実。そんな時は「来年こそ、来年こそ」という「百姓の来年」を合言葉に頑張ろうと、仲間達にエールを送っています。

研究者のHさんは、慣行稲作の理論的支柱である「V字型稲作理論」は稚苗型田植機の開発・普及のなかで利用されてきたと紹介。研究所は農薬に依存しないイネの持つポテンシャルを引き出す農法を体系化してきたと評価しています。

同じくIさんも官庁指導型の技術では「指導が百姓をだめに(宇根豊)」し、労働が疎外されてきたと指摘。理論と現場、研究者と農家が対等の立場で協力してきた研究所の姿勢こそ、新たな生物技術を構築するための条件であると位置づけています。

Mさんは農業土木研究の視点から圃場整備により田んぼから生き物がいなくなったという反省の上に立ち、「田んぼ生態学」を提唱。有機稲作田んぼがはたして生物が豊かどうかも検証しなければならないと問題提起も。

「宝物」は「田からのもの」であるというどなたかが発言されたフレーズが心に残った第1部でした。