そこそこの放送作家・堀田延が、そこそこ真面目に、そこそこ冗談を交えつつ、そこそこの頻度で記す、そこそこのブログ。
人生そこそこでいいじゃない



好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫 ま 49-6)
舞城 王太郎
講談社


この作家。
分かんない。
正直、分かんない。

文壇でも評価が二分しているらしい。

デビュー作「煙か土か食い物」はちゃんと読めた。
文体が非常に斬新で、面白いミステリーだった。
やや暴力描写が激しすぎて僕は嫌いだったけど。
ただ、読みやすかった。
今思えば、まだ。

で、そのあと「世界は密室でできている」にチャレンジして、途中断念。
三島由紀夫賞を獲った「阿修羅ガール」にチャレンジして、途中断念。
どちらの作品も、なんだかついていけないのだ。
何が書いてあるのか、読み進めるとどんどん頭に入ってこなくなる。
単純に僕の頭がバカなのか?
作家の方が斬新すぎるのか?
分かんない。
激しく露骨な性描写。
破壊的な暴力描写。
中学生や女子高生のしゃべり言葉のような文体。
次々に出てくる意味不明な登場人物、事象。
とにかく、分からなかった。

で、この「好き好き大好き超愛してる。」だ。

この作品は2004年上半期の第131回芥川賞候補になった。
批評家の間では「受賞して当然」の作品だったらしい。
だが選考委員の石原慎太郎が「タイトルを見ただけでうんざりした」と批判し、宮本輝も舞城の小説が大嫌いらしく、受賞は逃した。
一方、池澤夏樹や山田詠美などは強く推したそうだ。
批評家からはおおむね評価が高く「舞城に賞を与えない選考委員は小説が読めていない」というような、選考委員批判に利用されることも多いらしい。

当時話題だった超ベストセラー「世界の中心で愛を叫ぶ」に対抗する意図で書かれた小説だという。
つまり。
本当の愛はあんなもんじゃない、と。
好きな人が病気で死ぬのを悲しんで、なにが恋愛小説だ、と。
そりゃそうだ。
僕もあの「世界の中心で……」は最悪だと思う。
で、新進気鋭作家として、本当の愛を描こうとした。
そういう意図があるらしい。

で、読んでみた。

これが、良いのだ。
いやマジで天才かも知れない。
相変わらず何が書いてあるのかははっきり理解できない部分もある。
だが、それでも何かが伝わってくる本だった。
「世界は密室でできている」と「阿修羅ガール」は読めたもんじゃなかったが、「好き好き大好き超愛してる。」は読めた。
わりと平たく書かれた部分が多いというのもある。
だけど、意味不明の部分もちゃんと読めた。
なぜだか分かんないけど。
作家のある意味、進化なのかな?
僕の波長と作品の波長がたまたま合致しただけか?
とにかく。
すごい、と、唸らされた。

誤解を恐れず言えば、エヴァンゲリオン的。
何やってんだか分かんないけど、なんだか深い。
実際エヴァ的なSFも出てくる。
そして、分かりやすい部分はとことん分かりやすい。
全体的に言えば、ストーリーで伝えるのではなく、感覚で伝える小説だ。

最終章は、すごい。
泣く。

興味ある人は、まず本屋で立ち読みして下さい。
少なくとも最初の10ページぐらいは。
で、気に入ったら買うこと。
気に入らない人は、一生気に入らないと思うので。

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