ボロさんと話をしていた時、ふとゲルの天井を見たら、何やら毛の束があります。この写真ではわかりにくいですが、ゲルを支える枠木のつなぎ目のところに、その枠木を縛るように動物の毛が巻かれていました。
何であるかを聞くと、仔馬の尻尾の毛だということでした。小馬が生まれるとそのうちのいく頭かを手放すそうです。オスは種馬以外はいらないから、売りに出すのかもしれません。そのことは聞きそびれました。
その子馬の思い出として、尻尾の毛をゲルに縛っておくのだということでした。
家畜に対する牧民の姿勢は、日本人のペットに対するものとかなり違います。愛玩ではなく、家畜であり、日々の生活の必需品という面があります。ベタベタした意味での愛情は感じられず淡々と仕事の対象という感じはします。現に飼っている羊をと殺して食べるわけですから、根本的なところで割り切りが必要で、ある意味ドライな関係であり、そうでなければ生活がなり立ちません。
そう思っていたので、この子馬のことを忘れないように尻尾の毛をゲルに縛っておくのだと聞いたときに意外な感じを受けました。
にこりともしないボロさんの目がその話をする時やさしくなりました。