ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

ブルゴーニュの新AOCコトー・ブルギニョン本日発売

2012-06-07 19:28:13 | ワイン&酒
本日(2012年6月7日)、仏ブルゴーニュの新AOC “コトー・ブルギニョン” のワインが、
ルイ・ジャド社(メゾン)から初めて日本で発売されました。

それに伴い、ルイ・ジャド社からピエール・アンリ・ガジェ社長、オリヴィエ・マスモンデ輸出部長、社長の息子のチボー・ガジェの3人が先日来日し、記者会見を行いました。


左から)チボー氏、マスモンデ輸出部長、ガジェ社長

AOCコトー・ブルギニョン(Coteaux Bourguignons) は、フランスのINAO(国立原産地・品質研究所)が2011年11月24日に認定した新しい原産地呼称です。

生産地域はオーセロワからボジョレーまでのブルゴーニュ全域で、地域内のブドウであれば複数品種のブレンドが認められ2011年ヴィンテージから適用されます。



今までのブルゴーニュの格付けは下記のようになっていました(コート・ドール地区の例)

1)グラン・クリュ 特級ワイン (例:La Tache、Romanee-Conti など)

2)プルミエ・クリュ 1級ワイン (例:Vosne-Romanee 1er Cru Les Suchots など)

3)ヴィラージュ(コミュナル) 村名ワイン (例:Vosne-Romanee など)

4)レジョナル 地区名ワイン (例:Bourgogne Pinot Noir、Bourgogne Rouge など)

5)レジョナルの下のクラス (例:Bourgogne Grand-Ordinaire、Bourgogne Passe-Tout-Grand、 Bourgogne Aligote)

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今後は以下のように変わります

1)~3) 変更なし
4)5) 再編

4)レジョナル → 3分類 -(1)(2)(3)  ☆正確なルール(比率)を規定

(1)Bourgogne Pinot Noir (赤)
 ピノ・ノワール85%以上、15%までガメイ、セザール(ヨンヌ県のみ)可

(2)Bourgogne Rouge (赤)
 ピノ・ノワール70%以上、ガメイ30%まで(但し、クリュ・ボジョレーに限る)
※以前はガメイ100%でも“Bourgogne Rouge”と呼ばれるものが存在した

(3)Bourgogne Gamay (赤)
 ガメイ85%以上(但し、クリュボジョレーに限る)、ピノ・ノワール15%まで

5)レジョナルの下のクラス → 3分類 -(1)(2)(3) 

(1)Coteaux Bourguignons (白、赤、ロゼ)
 広域の複数のブドウ品種を自由な比率でブレンド可
※ただし、ガメイはクリュ・ボジョレーのブドウ限定

(2)Bourgogne Passe-Tout-Grand (赤)
 ピノ・ノワール1/3、ガメイ2/3、但し、同地区のブドウのみブレンド可

(3)Bourgogne Aligote (白ワイン -アリゴテ100%)

一見すると、Bourgogne Grand-Ordinaire (赤:ピノ・ノワール、ガメイも使用可) が Coteaux Bourguignons に置き換わったように見えます。

が、「グラン・オーディネールは、ピノにガメイを混ぜることでネガティブなイメージを持つものだったが、コトー・ブルギニヨンは、ブルゴーニュ地域のワインの素晴らしさを表現するものとして、ポジティブな位置付けのワインとして誕生した」と、ガジェ社長は言います。

よって、ルイ・ジャド社の長い歴史の中で、グラン・オーディネールは生産していませんでしたが、新AOCのコトー・ブルギニョンの生産には積極的に乗り出しました。

「品質の高いコトー・ブルギニョンを出すことが成功の鍵。品質が高ければ成功だが、並みのワインなら失敗」(ガジェ社長)



ブルゴーニュ地域には、北からシャブリ&グランド・オーセロワ、コート・ド・ニュイ、コート・ド・ボーヌ、コート・シャロネーズ、マコネ、ボジョレーという6つのワイン生産地区があります。

そうです、ボジョレー・ヌーヴォーで知られているボジョレー地区もブルゴーニュに入るのですが、7、8年くらい前からボジョレーワインは深刻な状況になってきました。世界的に売れなくなってきたのです。

そこで、ボジョレー地区の生産者たちが、自分たちもブルゴーニュの一員ということで、“ブルゴーニュ・ルージュ”(ガメイ100%でも可)や“ブルゴーニュ・グラン・オーディネール”(ガメイも使用可、ブルゴーニュのどこのワインでも格下げして売ることができた)をつくるようになってきました。

100年ほど前の時代のグラン・オーディネールは価格も高く、ポジティブな商品だったようです。しかし、ボジョレーのクリュワインを格下げしてグラン・オーディネールの名で売ってもいいようになってくると、だんだんと格下に見られるようになりました。
よって、せっかくグラン・オーディネールの名前を付けても売れなくなっていました。

こうしたことから、「ボジョレー地区もブルゴーニュの一員であり、離れ離れになっていた兄弟のようなもの。兄弟の1人が困っていれば手を差し伸べるのが人間として当たり前。兄弟が一緒に手を携えていくことが、これからのブルゴーニュ地方全体の将来につながっている」(ガジェ社長)と、ブルゴーニュの北から南をまとめるプロジェクトが進み、レジョナル以下のワイン再編が行なわれました。

その結果、誕生したのが、“コトー・ブルギニョン” です

コトー・ブルギニョンはピノ・ノワールにガメイをブレンドできるブルゴーニュ・パストゥグランと似ていますが、パストゥグランはブレンド比率が決められ、かつ同じ地区でつくられたブドウしかブレンドすることが認められていません。

しかし、コトー・ブルギニョンは、100%ピノ・ノワールでも、100%ガメイでもOKですし、コート・ドール地区のブドウとボジョレー地区のブドウをブレンドしてもかまいません。

ブレンド比率もブドウ産地も、各社の考え方次第の、自由なワイン なのです。
よって、さまざまなタイプのコトー・ブルギニョンが登場してくるでしょう。



ルイ・ジャド社では、赤はコート・ドール地区のピノ・ノワールとボジョレー地区のガメイをブレンドしています。というのも、コート・ドール地区の土壌はガメイに合わず、月並みなワインにしかならないからです。

「ガメイに最適なのは花崗岩土壌。コート・ドールでつくられたパストゥグランより、花崗岩土壌のボジョレーのガメイを使ったコトー・ブルギニョンの方が確実に美味しい」とガジェ社長。

さて、そのコトー・ブルギニョンを飲ませていただきました!


左)Coteaux Bourguignons Blanc 2011 右)Coteaux Bourguignons Rouge 2011 Louis Jadot

は、ブルゴーニュ地方(詳細は不明)のシャルドネと厳選されたコート・シャロネーズ地区のアリゴテのブレンドで、シャルドネの方が比率は高め。アルコール12.5%。

ペイルグリーンの若々しい外観で、花、白い果肉の果物のアロマが繊細でエレガントに香ります。酸がイキイキとしてフレッシュ!果実味がきれいで心地よく、なめらかさもあります。

コート・ドールのピノ・ノワールとボジョレーのガメイのブレンドで、比率はシークレット。というのも、ヴィンテージの状況により変わるから。アルコール12.5%。

紫の色調が鮮やかで、輝きのある外観をしています。たくさんのフルーツの甘いアロマが立ち上り、口に含んでもフルーツのニュアンスがたっぷり。果肉感のあるやわらかなアタックがチャーミングで、タンニンは軽快。まろやかな果実味が楽しめます。

どちらもよくできていて、料理にも幅広く合わせられるタイプのワインだと思いました。



ルイ・ジャド社としては、最上級レンジから下のランクまですべてカバーして消費者に届けたいという思いがあり、コトー・ブルギニョンは、ブルゴーニュワインにまだ馴染みのない若い世代へのイントロダクション的なポジションのワインとしているとのこと。

よって、価格はお手頃(各1850円、税別)なのですが、ブレンドはルイ・ジャド社に40年以上在籍しているワインメーカーである名匠ジャック・ラリディエールが行なっていますし、エチケットは、グラン・クリュや1級ワインに貼られているのと同じデザインのバッカスラベルが貼られているという、グレードの高いワインなのです。

ブルゴーニュワイン委員会会長でもあるガジェ社長は、新AOCの誕生にあたり、率先して実際のワインづくりに取り組みました。
他にどこがつくっているか、まだよくわからないと言っていましたが、ルイ・ジャド社のコトー・ブルギニョンが第一号のコトー・ブルギニョンのひとつであることは間違いないでしょう。

それが、世界で最初に日本で発売 されることになりました

日本の成熟した食文化、ワイン市場があること、日本人の味覚の繊細さ、エレガンスさや正確さを求める面を評価し、敬意を表して、というのが、日本を最初に選んだ理由だそうです。

新AOCワインが世界で最初に日本で飲めるとは、不思議な気分ですね(笑)

ルイ・ジャドのコトー・ブルギニョン(2011年ヴィンテージ)は本日発売ですから、近いうちにきっと出会うことでしょう。



上述したように、エチケットデザインは他と共通ですから、“Coteaux Bourguignons ” の文字をお見逃しなく!

(輸入元:日本リカー株式会社)

→ 補足 「AOCコトー・ブルギニョンの定義」


右端は輸入元 日本リカー株式会社の大久保社長



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