ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

南アの超プレミアムワイン「シャノン・ヴィンヤーズ」

2009-11-11 15:58:43 | ワイン&酒
9月に、南アフリカシャノン・ヴィンヤーズ(Shannon Vineyards) から営業担当のスチュアート・ダウンズ氏が来日し、日本で新発売するワインの紹介をしてくれました。


Stuart Downes  Shannon Vineyards

彼はチリのコノ・スルの輸出マネージャーとして10年間携わっていて、日本にも6年ほど前まではコノ・スル社員として来ていたとのこと。

しかし、彼は元々は南ア出身。
チリで築いてきた経験を元に、南アの実家(40年以上の歴史のある果物栽培農家)でも成功させたい ということから、スチュワートとジェームス兄弟がシャノン・ヴィンヤーズを立ち上げました(2000年)。



シャノンがあるのは、ケープのエルギン・ヴァレー(Elgin Valley)。

実家の父は梨やリンコの栽培に長け、世界にも輸出し、高い評価を受けている人物で、その哲学は「土地を表現すること」。

スチュアートとジェームス兄弟も、
「土地のテロワールを1本のワインに表現したい」と思うようになったと言っていました。

ジェームスはスコットランドで鮭の品種改良に取り組んでいたという研究者。
父の農業経験、スチュワートのワイナリーでのセールス経験、そしてジェームスの頭脳が加わって、シャノン・ヴィンヤーズが誕生したわけです。


夏、ケープタウンのあたりにはブラックサウスイースターという強い風が吹きます。
谷の一帯には霧が発生し、日中でも気温が下がるので、ブドウは長い時間をかけてゆっくり成熟することができます。
よって、エルギンはケープの他の産地よりも2週間ほど収穫が遅れます。

また、見た向き斜面はボルドーのような気候に、南向き斜面はブルゴーニュのような気候になるのだとか。

冷涼な気候のためキレイな酸が特徴で、糖分、フェノール類もよく成熟するので、バランスのよいブドウが得られ、洗練されてエレガントなワインになる、とスチュワートは言っていました。



シャノンでは、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワール、メルロのワインをつくっています。



(右)Shannon Vineyards Sauvignon Blanc 2008 (3,000円)

シャノンでは、ソーヴィニヨン・ブランは5つのクローンを栽培していますが、 「クローン研究」については、シャノンとしては非常に力を入れているようです。なんたって、ジェームスは品種改良の研究者ですから(養殖の鮭でしたが)。

ソーヴィニヨンには15%のセミヨンを混ぜています(重量感、深みを与えるため)
食事と一緒に楽しんでもらいたいと思ってつくったもので、売れなかったら自分で飲めばいい、それなら品質の高いものを、と考えて造った結果、 「料理に合う数少ない南アのソーヴィニヨン・ブラン。ミネラルたっぷりでエレガントなスタイル」と高い評価を受けているようです。

このソーヴィニヨンは「和食、シャコの天ぷら(前夜に食べたようです)、魚のフライなどに合う」とスチュワート。
南アでも魚介はよく食べるものの、バターで味付けしてしまうので、そうした料理が合うのはシャルドネ。
このソーヴィニヨンは食べ物のうまみを引き出してくれるようです。

飲んでみると、果実味がよく熟し、酸がきれいで、非常にバランスのいいワインだと思いました。
これなら幅広い料理に合わせられそうです。



(左)Shannon Vineyards Pinot Noir 2007 (7,000円)

ピノ・ノワールは12の異なるブロック(6.3ha)に5つのクローンを植えています(113、114、115、667、777)。
114のブドウはスパークリング生産者などに売ってしまうため、残り4.5haがシャノンのピノ・ノワールになります。

ジェームスは、スチュワートのいたチリのコノスルのピノ・ノワールのトップレンジ「Osio」のファーストヴィンテージ2002年などの醸造にも関わっていたこともあり、
「エルギン・ヴァレーで、南アでNo.1のピノ・ノワール生産者になろう!という意気込みでやってきた」とスチュワートは言います。

最初の5年はブドウは他のワイナリーに売っていたようで、
この時は「ブドウ栽培家として南アNo.1を目指せ!最も高い値段でブドウを買ってもらえる栽培家になろう!」と思っていたおかげで、シャノンのブドウは品質が高いと評判だったとか。

区画、クローンごとに仕込み、それぞれの個性を生かしてブレンドしています。
2006年は自家用に2樽のみ造ったけれど、コマーシャルベースでは2007年がファーストヴィンテージ(3,000本)。

彼らが目指すピノ・ノワールは、その土地の個性に根ざし、
エレガントで、キメ細かなストラクチャー、洗練味があり、料理に合うクラシックなもの

よく凝縮しすぎているせいなのか、今の段階ではまだ若く、各要素がバラバラでまとまりに欠ける感じがあります。
独特のスモーキーなフレーバーも強く、カドのある感じが否めないので、もう少し寝かせ、全体がなじんでくるとまた変わってくるのではと思いました。



Shannon Mount Bullet 2007  (6,000円)

エルギンはメルロがうまく育つ、という父の意見を尊重して生まれたのが、
メルロ100%の「マウント・バレット」。

「やせて、一見よくない土地に植えた(一面の畑を5つの区画に分けで5つのクローンを植えた)結果、木が大きくならないので良かった」とスチュワート。

南アのメルロはグリーンぽいのが多く、「メルロ」だとイメージが良くないので、ワイナリーのテラスから見える山の名前を付けています。

味わいは、カベルネ・フランのようなパフュームがあって芳醇で、シラーのようにスパイシーで、カベルネ・ソーヴィニヨンのようなボディとなめらかさ、ストラクチャーを持つと言われたことがあるようですが、私はさすがにそこまでは感じ取れなかったものの、なめらかでバランスの良いメルロだと思いました。



Pinot Noir Late Harvest 2009 (甘口)

参考商品として持参してくれた、ピノ・ノワール100%の甘口(バレルサンプル)。
貴腐菌が付いたブドウ15%を加え、糖度は170g/l。

このノーブル・レイト・ハーベスト、実に美味
ブドウのアロマが残り、甘さがやわらかく、気持ちがほわほわ~っとします

ハーフボトルで1,000本、母を喜ばせるために造り、2010年2月リリース予定。
これはぜひ日本に入れてほしいですね!



南アのワインというと、従来はもう少しカジュアルなものが多いのですが、シャノンのワインに関しては旧世界的なスタイルの本格派。
よくできていますが、生産本数が少ないこともあり(甘口以外はそれぞれ3,000本)、従来の南アワインよりもかなりお高いプライスとなっています。
お試しで買ってみるには勇気が必要な価格ですが、ワイン会で他国のピノやメルロと比較試飲をしてみる、といった企画を立てて飲んでみるのも面白いかもしれません。
また、2010年のサッカーワールドカップの舞台は南アですので、それに備えて今のうちに南アワインを揃えておくのも良いかも?


(輸入元: 株式会社スマイル)

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2 コメント

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ワインが飲みたくなってきた (peakhunter)
2009-11-12 22:59:35
こんばんは、
すっごくひさしぶりに、自分がブログ復帰したので、連チャンで登場して済みません。

さすがまゆみさん、プロだけあって、飲むだけで知識のない私でも、買いに走りたくなりました。でも今日はビール
返信する
買いに走るのなら (まゆ@管理人)
2009-11-13 14:31:32
peak-hunterさん、毎日でもどうぞ(笑)
そちらも日記ラッシュですね!

この南アワインは生産本数が少ないのでなかなか出会えないかもしれませんが、スチュワートがいた11/12に紹介したコノ・スルのワインなら、たいていどこでも置いてあります。
買いに走るのならそちらが便利かも(笑)
返信する

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