ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

アルザスワインの個性派たち

2012-09-27 19:16:45 | ワイン&酒
スパークリングワイン(クレマン・ダルザス)に引き続き、アルザス&ローヌ試飲会で出会った個性豊かなワインを紹介します。


左)Klevener de Heiligenstein Nature 2010 右)Riesling Nature 2010  RIETSCH
(輸入元希望小売価格、各3000円、輸入元:株式会社W)

アルザスのミッテルベルカイム村の家族経営のドメーヌ・リエッシュがつくる白ワイン 「クレヴネール・ド・ハイリゲンシュタイン・ナチュール(サヴァニャン・ローズ)」 は非常に興味深いものでした。

果実味がギュッと凝縮して艶やかさがあり、独特のアロマも濃厚で、かつ酸の支えもある、ボディのしっかりしたワインです。若干アルコールが高いように感じ、バックラベルを見ると、15%もありました。パンチもボリュームもあり、まろみ、なめらかさのあるワインですが、だらんとした緩さはありません。
ピノ・グリでもなく、ゲヴュルツでもなく、いったいコレは何者?

“Klevener de Heiligenstein” クレヴネール・ド・ハイリゲンシュタイン 品種名です。
また、Klevener de Heiligenstein は1971年6月の法令により定められたサブアペラシオン名でもあります。

そして、Klevener de Heiligenstein は “Savagnin Rose” (サヴァニャン・ロゼ)とも呼ばれます。

“サヴァニャン” というと、フランスのジュラ地方の白ブドウ品種で、ヴァン・ジョーヌ(黄ワイン)をつくるブドウとして知られていますよね。

かつて Klevener は、アルザスやドイツ語圏の地域(ドイツ、ハンガリー、オーストリアなど)では、特定の品種ではなく複数のブドウ品種のことを指す言葉として使われてきたようで、例えば16世紀のアルザスでは、Klevener と表記されたワインはあちこちで見られるほど普通に存在したといいます。

また、Klevenerは Traminer(トラミナー)と同一とみなす説もあります。

サヴァニャンは19世紀の終わりごろまではアルザスでも広く栽培されていました。
しかし、19世紀中頃くらいからゲヴュルツトラミネールへの植え替えが進み -実はこれがサヴァニャンの変種?(ピンク色をしたアロマティッな性格を持つ)とされるのですが、ハイリンゲンシュタイン周辺だけは Klevener de Heiligenstein という名前が残っていきます

それゆえ、1971年6月の法令でSavagnin Roseを生産する産地、サブアペアシオン名として認められたわけです、その後、地域がきっちり限定されるようになりました。

◆認められているコミューン:Bourgheim, Gertwiller, Goxwiller, Heiligenstein Obernai

つまり、上記5つのコミューンでつくられたサヴァニャン・ロゼ種のワインのみが、Klevener de Heiligensteinと表記できます。
ただ、現在は15生産者くらいしか、このワインをつくっていないと聞きました。

なお、Heiligensteinを冠さない単なる“Klevener”は、現在はピノ・ブランに使われることが多くなっています。ちょっとややこしいですね。

さて、上記のどちらのワインにも、 “Nature” (ナチュール) という表記があります。
他の生産者のエチケットでも見かけました。

これは、サン・スフル(Sans Soufre、亜硫酸なし)のワインに認められた表記です。
Natureの文字は数年前から(正確な年はわかりませんが)表記できるようになっています。




左から)Aussitot Bue ! 2010  Lieu-dit ALTENGARTEN 2009  Sui Generis 2009   
Lieu-dit FRONENBERG 2009 / Hubert et Heidi Hausher 
(参考上代 2600円、3000円、3200円、4500円、輸入元:株式会社W)

オシェールはアルザスのエギスハイムで何代も続く家系ですが、若い夫婦が2000年からようやく自ら瓶詰めを始めました。4haの畑は馬(スキッピーという名前)が耕します。

エチケットがとてもキュートで印象的!これらは彼ら夫婦の娘たちの作品。
この姿を見ただけで楽しくなりませんか?

楽しいのはエチケットだけではありません。
単一品種名をエチケットに表記するのがアルザスワインの通例ですが、彼らのワインは、区画ごとにいくつかの品種をブレンドしてつくる ものが多いのです。

例えば、「オーシトビュ!」(Aussitot Bue !)は、オーセロワ+シルヴァネール+ピノ・グリ。
熟したニュアンスのある、個性的な味わいが面白い!

「アルテンガルテン」(Lieu-dit ALTENGARTEN)は、リースリング+ゲヴュルツトラミネール。
酸と果実味のバランスがよく、白ワインとしてはコレが個人的にはイチオシ!

「スイ・ジェネリ」(Sui Generis)2009年はゲヴュルツトラミネール単体ですが、グラン・クリュのフェルシクベルクの畑のブドウを使い、demi-sec寄りに仕上げています。素晴らしいヴィンテージのせいもあり、ふっくらとして、複雑味のある味わいです。

「リューディー・フローネンベルク」(Lieu-dit FRONENBERG)もピノ・ノワール100%。
ナチュラルできれいな、やさしいスタイルの赤ワインでした。

複数のブドウをブレンドする場合、アルザスでは 「エデルツヴィッカー」、または 「ジョンティ」 という名称のワインになります。品種名を前面に出したワインに比べると、ブレンドワインは格下に見られがちですが、オシェールのブレンドワインのように銘柄名をつけて出すと、ポジティブな感じがしますね。



Riesling 2006 Domaine Bliemerose
(参考上代 2900円、輸入元:有限会社ヌーヴェルセレクション)

一見、ごく普通のアルザスリースリングに見えますが、一部をバリックの新樽で熟成させています。リースリングはバリックと無縁、というのが常識ですが、これは驚き!
225リットルのフレンチオーク樽で、樽に入れる期間は年によって変わるとか。

飲んでみると、果実味を支える酸がしっかりあり、ミネラルも感じます。2006年という年もあり、いい熟成感もあります。樽のニュアンスを探しましたが、想像していたよりもグッと軽めで、全体的なバランスは取れていると思います。

ドメーヌ・ブリムローズは女性醸造家の生産者で、2003年に設立、ビオディナミを行い、2010年にエコセール認証を取得。イギリス市場を中心に話題になっているそうです。



静かに時が流れているように見えるアルザスでも、新しい動きがあちこちで起きています。

個性豊かな新しいアルザスワインたち
これは目が離せません!


コメント
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