ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

メルシャンの甲州 新ヴィンテージ

2012-06-27 10:32:28 | ワイン&酒
このところロゼワインの話題が続きましたが、「白ワイン推進委員会」主宰としては、やはり白ワインも推さねばなりません(笑)

そこで、新ヴィンテージが発表された 「シャトーメルシャン」の甲州ワイン を紹介したいと思います。



甲州 は日本固有のブドウ品種で、日本全体の収穫量の97%、醸造用の93%が、山梨県で栽培されています。

ところが、1992年をピーク(771ha、12700トン)に、山梨県で栽培される甲州ブドウの収穫量は年々減少し、2001年には少し盛り返したものの、再び減少傾向となり、現在はピーク時の半分になっています。その理由のひとつは、栽培農家の高齢化による農業人口の減少です。

甲州ブドウの生産量は減少してきていますが、ブドウおよびワインの品質においては年々進化してきています。

例えば、シャトー・メルシャンの場合、甲州ワインの開発に着手した1975年(「勝沼 ブラン・ド・ブラン」、「甲州鳥居平」)以降、1983年の「甲州シュール・リー」(辛口の先駆け)、1992年の「甲州小樽仕込み」を誕生させてきました。

21世紀に入ると、2002年の「甲州グリ・ド・グリ」、2004年の「甲州きいろ香」、2007年の「勝沼のあわ」、2008年の「勝沼甲州」(シュール・リーのバージョンアップ)と、甲州ブドウの味わいの特性(グリ・ド・グリ)、香りの特性(きいろ香)にフォーカスした開発を行っています。

こうして見ると、甲州ワインといっても、さまざまなスタイル、味わいのワインがあり、造り手によってもまたさらに違ったワインになりますから面白いですよね。もちろん、年による個性もあります。

2011年のヴィンテージ状況は…
萌芽、開花とも例年より1週間から10日遅れ、また、例年になり早い入梅で、生育の遅れが心配されましたが、梅雨明けが早く、また、早い時期からの猛暑となったため生育の遅れを取り戻しました。しかし、9月には雨台風があり、天候に恵まれた年ではありませんでした。そんな中、2010年は夜間も暑かったけれど2011年は夜間の気温が下がり、酸が保たれました。
病害などの発生もありましたが、シャトー・メルシャンでは、収穫のタイミングをキメ細かくコントロールし、また、厳しい選果を行なうことで、いい状態で収穫ができました。



さて、甲州ワインにとって、4、5月は新ヴィンテージのリリース時期。
初夏にリリースされる新しいワインは、これから暑くなっていく季節に嬉しいフレッシュさがあり、旬の食材ともよくマッチします。

シャトー・メルシャンの甲州ワインでは、「勝沼のあわ 2011」および「シャトー・メルシャン 甲州きいろ香 2011」が4月11日に、「同甲州グリ・ド・グリ 2011」および「同勝沼甲州 2011」が5月30日に全国で発売されました。



勝沼のあわ2011

山梨県甲州市勝沼地区産の甲州ブドウを使い、ステンレスタンク(一部樽)で育成(約3カ月)したスパークリングワインです。グリ・ド・グリの原酒を一部使用しているため、ほのかな赤みがあります。ガスが加わると味わいが軽く感じられるため、しっかりしたグリ・ド・グリの原酒を加え、軽くなりすぎないようにしています。
フレッシュでみずみずしく、スッキリとしたほのかな甘さがあります。


シャトー・メルシャン 甲州きいろ香 2011

山梨県産甲州ブドウ(75%甲州市産、25%山梨市産)、ステンレスタンクで発酵、熟成(約4カ月)させています。

きいろ香は甲州のアロマの発現に注力したワインです。これまでに、グレープフルーツ、カシスの芽、ダマスクローズといった香りを引き出してきました。2011年は、柑橘のフレーバーの成分がピークかつ渋みがなく、酸もシャッキリと残る時期(以前よりも前倒し)に収穫。また、水分ストレスの研究も行いました。
アロマはグレープフルーツ、パッションフルーツ、柚子、カボス。シュルー・リーを半分行なっているので、爽やかさの中に穏やかな旨味があります。


シャトー・メルシャン 勝沼甲州 2011

シャトー・メルシャン 甲州シュール・リーがバージョンアップし、2007年から勝沼甲州となりました。ブドウは100%勝沼産をあえて選んでいます。というのも、勝沼産の甲州ブドウは他の地区の甲州ブドウに比べてタンニン量が多く(昼夜の寒暖差が大きく、ブドウの色付きがよくポリフェノールを多く含むため)、しっかりとした味わいのワインになるからです。
このワインもシュルー・リーを行っており、厚みのある、しっかりとした辛口です。


シャトー・メルシャン 甲州グリ・ド・グリ 2011

白ワインをつくるものの果皮は薄紫色をしている甲州ブドウの果皮に注目したのが、このグリ・ド・グリ。グリとはフランス語で灰色のことで、果皮の色の表現に使われます(薄紫色を灰色と表現する感覚は、日本人には難しいかもしれませんね)。
今まではスキンコンタクト(果皮を漬け込む)が多かったようですが、2011年はかもしを加え、厚み、骨格、複雑味を加えたとのこと。また、一部MLFを行なっています。それにより、なめらかな渋みと酸のバランスが取れたワインになりました。
ピンクがかった琥珀色が個性的。他の3つに比べて熟した味わいがあります。



どのワインも、それぞれのコンセプトが生きていて個性があります。
どれが好き、というのも個人の嗜好次第かもしれませんが、合わせる料理などによっても、おいしさの感じ方が違ってきますよね。

明日は、甲州ワインと料理のマリアージュを紹介したいと思います。


コメント
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