ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

フランスワインの現状

2007-10-27 22:53:34 | ワイン&酒関係雑記
先日のNHKの「クローズアップ現代」で、フランスワインの現状が紹介されていました。

それは、魅力的な価格&品質を誇る新世界ワインに押されがちなフランスワインの苦境を伝えるものでした。



アメリカやオーストラリアといったニューワールドのワインは、合理的で近代的な方法で生産されているためにコストパフォーマンスが良く、ワイン自体も「カネルネ」や「シャルドネ」などの品種名が付けられているので、消費者にもわかりやすく、フランス国内でもどんどん需要が伸びています。

パリ一番のワイン専門店でも40%がニューワールドのワインで、フランスの消費者もニューワールドのワインを買うのに抵抗がなく、むしろ積極的に買っている姿を映し出していました。


ということから、フランスワインの需要がガクンと落ち込み、大量に余ったワインを処分するのにEUのワイン関係の予算の40%を使っているという事実があるといいますが、その数字にはビックリです。


あるフランスのブドウ栽培農家では、巻き返しをはかろうと畑を広げ、そのためにトラクターを購入したり、色々な設備投資をしたにもかかわらず、借金だけがかさみ、ついには畑を手放さざるを得なくなってしまった・・・という事例が紹介されていました。

こんなふうにして、フランスのブドウ畑はこのところ減少傾向ということで、これもまた驚きの事実ではないでしょうか?

いくら生産量を増やして販売量増加による増収をはかろうとしても、ワイン余剰に拍車をかけるだけです。ワイン自体が変わらないのなら、品質も価格も魅力的なニューワールドのワインに対抗できるはずがありません。


そこで番組では、その土地ならではの品種にこだわり、手をかけて生み出したワインで成功を収めつつある生産者が紹介されていました。

カベルネやシャルドネといったメジャー品種のワインが、どこの国のものを飲んでも画一的な味わいになりがちな昨今、ニューワルドにはないその土地ならではの品種の個性を打ち出すことによって差別化をはかり、それが評価されたひとつの成功例です。



このように、今後の生産者の進む方向にはさまざまな選択肢があると思いますが、「質より量」の時代は終わり、「品質と価格のバランス」、「個性」、そしてこのところは「安全性」が求められる時代がとうに始まっているということを、彼らはしっかりと認識する必要があるでしょうねぇ・・・

コメント
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