拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

オーボエとクラリネット(その2)

2020-01-21 12:37:19 | 音楽
こないだEテレでベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番をやっていた。シフの弾き振りだった。シフと言えば、まだ若い頃(私もシフも)会場で生演奏をしていたとき、客席で誰かがおっきな音で「へーくしょん」とやったら、すかさずシフが「へーくしょん」と真似して会場は笑いに包まれたが、シフは憤懣やるかたなくてしたんだと思った。この第4番は大好きである。ベートーヴェンのピアノ協奏曲で最初に買ったレコードは第5番(皇帝)ではなく第4番(と第2番)であった。ほんとに幸せ感溢れたロマンチックな曲。ベートーヴェンが恋をしていたときの曲で(つうか、ベートーヴェンは生涯中ほとんど恋をしていた。それが上手くいきそうだった時期というのが相当)、ああ、人は恋をすると、こんなに(でれでれに)なるんだー、という見本のような曲である。で、今回Eテレを見ながら、そうだ、この曲はフルートが1本がなんだよなー、と思い出した。ベートーヴェンの曲のすべてで木管楽器が2管編成であるわけではない。それでも、よくオーボエとクラリネットを両方入れてくれた。モーツァルトとなると、例えば交響曲第40番などは、当初オーボエは入っているがクラリネットは入っていなかった(改訂版で初めて付け加えられた)。後から入れてくれただけまだいい。あの壮麗な第41番(ジュピター)にはクラリネットはない。クラリネットが大活躍する第39番は例外である。クラリネットは当時新興楽器であった。因みに、第39番にはクラリネットが入る代わりにオーボエが入らない。待てよ。新興楽器であるクラリネットだが、モーツァルトの先輩のハイドンの「四季」「天地創造」ではオーボエとクラリネットが揃うぞ(ミサソレ通唱会の二日前の天地創造通唱会で、オーボエのIさんの隣でクラリネットを吹いたばかりである。因みに、このときはフルートのSさんもいて、この三人の組合せは以前白井でドイツレクイエム通唱会をやったときと同じである)。いや、ハイドンはモーツァルトの先輩と言っても長生きだったから、「四季」「天地創造」を書いたのはモーツァルトの死後であり、クラリネットもだいぶ存在感を増した時期であった。因みに、私がクラリネットのカール・ライスターのファンになったのはカラヤン指揮のベルリンフィルをサントリーホールで聴いたとき、曲はまさにモーツァルトの第39番(とブラームスの第1番)だった。口からクラリネットが下に斜め45度の角度で伸びているのが奇っ怪であったが、まるで普通に息をしてるような感じで楽々と吹く様はまさに名人そのものだった。このときのオーボエはシェレンベルガー(この人も名人だったなー)。シェレンベルガーあたりから現在に通じるベルリンフィル・イケメン路線が始まったのだろうか。フルートのパユとか、クラリネットのオッテンザマーとか(かつてのクラリネット=ライスター、オーボエ=コッホの時代はその路線とは一線を画す野武士集団だった)。イケメンは嫌いだ(やっかみ)。悔しいから、ホルンのサラ・ウィリス(見目麗し系)の名前を出してやる。いや、サラ・ウィリスの名前を出すんだったら、クラリネット吹きとしてはベルリンフィルにクラリネットで入りかけたザビーネ・マイヤーの名前を出すのが先かもしれないが、私、いまいち趣味じゃないんで(何が?)。しかし、カラヤンは違った。ザビーネ嬢にご執心でゴリおし入団させようとして、で、ベルリンフィルともめて疎遠になり、ウィーンフィルとの結び付きを深めていくのだった。