暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

正午の茶事-風吹南岸柳 (1)

2014年04月19日 | 思い出の茶事  京都編
              (京都・白川疏水の柳)

4月13日、紅しだれ桜が満開の候、正午の茶事へお招き頂きました。
ご亭主は、灑雪庵の茶事へ何度もいらしてくださったYさまです。
京都駅で相客のMさま、Sさまと待ち合わせ、11時の席入でした。

待合に2羽の雀が描かれたお軸が掛けられていました。
眼鏡を取り出して落款を見ると、
「あらっ! 栖鳳だわ」
チュンチュン・・・急にかわいらしい鳴き声が聴こえてくるようです。
(・・・栖鳳の画を表装へ出したばかりなので、つい嬉しく・・・)

            
                     白川疏水の桜

カーテンで上手に仕切られた廊下を通り、庭の腰掛待合へ。
庭好きの相客のお話では苔庭は育てるのも管理も大変なようですが、
美しく育っていて、杉苔、ゼニ苔、ハエ苔など種類も増えています。
腰掛で静かに語り合いながら迎え付けを待つ、大好きなひと時です。

感謝の心をこめて、ご亭主と無言の挨拶を交わし、席入りしました。

躙り口で席中を覗くと、清寂の空間に釣り釜が幽かに揺れています。
・・・一瞬、何とも言えぬ鮮烈な印象を受けました。

床のお軸は、
「風吹南岸柳」
(風は南岸の柳に吹く)
建仁寺・益州和尚の筆です。

この禅語は対句になっているそうで、
「風吹南岸柳  雨打北地蓮」
(風は南岸の柳を吹き  雨は北地の蓮を打つ)

禅語の意は深く、揚子江の南と北の様子を現した語句ですが、
実際に南と北では気候も文化も風俗も人の性格も違うそうです。
しかし、この禅語は差別や違いを表現しているようで、そうではなく、
実は平等をあらわしていて、基には不変の真理が込められているとか。

禅語の真理を理解するのは難しいですが・・・
風が柳の若葉を揺らして吹いている情景が目の前に広がり、
爽やかな春風が耳元を通り抜けていきました。

           
              (春風になびく柳  鴨川東岸にて)

久しぶりに釣り釜の初炭手前を拝見しました。
霰遠山の筒釜は菊地政直造、重量感のある鎖、弦、鐶の作者はえ~と・・・?
小あげ、大あげ、弦や鐶の扱い、揺れを抑える釣り釜独特の所作も好いですねぇ~
さらさらと流れるようなYさまの炭手前をうっとりと眺めていました。

はっ!と我に返り、「お香合の拝見を」
香合は、緑釉に金箔の模様が華やかな京焼の琵琶香合、
香は、松栄堂の加須美です。

           

つづいて懐石になり、京風の味付けがもう絶品で、何度も舌鼓です。(シアワセ!)
今後の参考にしたい春の献立でした。

  向付    鯛、水前寺海苔など
  汁     桜麩(道明寺粉入り) 合わせ味噌  辛子
  煮物碗   筍真蒸  筍  ワカメ  木の芽
  焼物    太刀魚
  炊合せ   鯛の子  蕗  小芋
  和え物   春野菜の木の芽和え
  箸洗い   姫皮
  八寸    サヨリの一夜干し  もう一種
  香の物   沢庵  胡瓜糠漬  もう一種
  酒


           正午の茶事-風吹南岸柳(2)へつづく


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