暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

東寺の畔・炉開きの茶事へ・・・その2

2018年11月21日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

    仁和寺の紅葉をパチリ (2018年11月5日撮影)

(つづき)
懐石の後に主菓子を頂き、待合へ中立しました。
主菓子は手づくり、下から水色、緑、ピンク色に染まる竿もので、銘「竜田川」・・・頂戴するのが惜しいような風情でしたが、しっかり頂きました。

銅鑼が打たれ、後座へ席入りすると、床の御軸「壽」は炉開きの花に変わっていました。
掛け花入に紅色の嵯峨菊とツワブキが清々しくいけられています。
飴色と黒が混じりあう景色の花入は醤油壺、膳所焼とのことでした。



点前座に廻ると素敵な棚があり、初めて見る表千家流の旅卓(たびじょく)です。
中棚に優美な赤絵の小壺、下段に灰青色の水指、「あらっ!大好きな虫明焼かしら?」と眺めていると、唐津焼とのことでした。
白い象嵌の2匹の鶴が前向きと、裏に後向きで居るのも炉開きにぴったりです。


  旅卓・・・水指と薄器の取り合わせがステキ!です

火相も湯相も好く、いよいよ濃茶点前がはじまりました。

 「(前略)・・・茶事でお迎えするのは5年ぶりでしょうか
  懐かしく思い出しております
  相も変わりませず進歩しておりませんが
  心を込めて御茶一服差し上げます・・・(後略)」


頭の片隅で頂いたお手紙を思い出しながら、お点前を見詰めます。この緊張感ある時間が大好きです。
仕覆を脱がし、袱紗を捌き、茶入や茶杓が清められていくと、お点前するご亭主も見詰める客も共に清浄無垢な世界へ浄化されるような心地がします。

Yさまが心を込めて練ってくださった濃茶、茶碗から匂い立つ豊饒な香りを味わいながら口に含むと、なんとまろやかな濃茶なんだろう!
口の中に甘みと旨味と僅かな苦みが広がっていきました。
最近は薄めの濃茶に慣れ親しんでいたけれど、しっかりと濃い、濃茶らしい濃茶を久しぶりに堪能した気がします。
炉開きの時季にのみ特別頒布の抹茶、銘「無上」(柳桜園詰)をご用意いただいたそうで、恐縮でした。

茶碗は懐かしい高麗呉器茶碗、添えられた古帛紗がう~ん?・・・思い出せません。
呉須染付の茶入にぴったりの緑地着物裂の仕覆、
大徳寺形の貝先、時雨を思わせる茶杓は、大徳寺高桐院住持であった上田義山の銘「松風」でした。



濃茶が終わり、後炭です。
炉の炭の残り具合で、いつのまにか時が過ぎてしまったのを知り、
手際よく胴炭を寄せ、大きな輪胴から炭を置いていくYさま、頼もしくもあり日頃の修練の様子がうかがえました。

煙草盆、干菓子が運ばれ、薄茶になりました。
干菓子も全部手づくり、果物3種(栗、イチジク、葡萄)を煮たり、コンポートして乾燥したり、琥珀糖に漬けたりされたそうで、個性的でオシャレな干菓子でした。

時代のある茶箱が運び出され、茶箱・月点前で薄茶を頂きました。
炉の茶箱点前は初めてですが、何やら風流な炉開きとなりました。
それもそのはず、ヘギ目の茶箱の蓋裏に
  月雪花・・や
   三乃友      圓能斎

とありました・・・。

今回は幸運にも炉開きの御茶を賜り、心から御礼申し上げます。
ありがとうございました!
「相も変わりませず進歩しておりませんが・・・」とんでもございません。
Yさまらしい渾身のお茶事で、完成度が凄い!です。
相客のOさんとFさんもきっといろいろなことを学び、刺激を受けたことでしょう。
正客としてご亭主の思いをどれほど受け止められたか疑問ですが、これに懲りずに月雪花の時季にもお声掛け下さると嬉しいです。

遠いですが、暁庵の茶事や茶会へもお運びくださると望外の喜びでございます。
これからもどうぞ宜しくお付き合いくださいませ。 


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