暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

ツワブキ咲く跡見の茶会・・・その2

2018年11月27日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)




(つづき)
菓子が運ばれ、濃茶点前が始まりました。
菓子器は金継をした白磁、こちらも李朝のもので祭器とか。
主菓子は「愛信堂」の「栗きんとん」・・・超!絶品でした。
(忘れないように住所も調べました。京都市上京区元誓願寺通り堀川西入ル南門前町426)必ずまたご縁がありますように・・・。

薄暗い茶室ですが、風炉先窓からの明かりがご亭主をほんのりと照らしだしていました。
茜色の無地の着物がとてもお似合いで、自主稽古を思い出しながらしっとりとしたお点前を嬉しく見詰めます。

席入の時から気になっていた茶入の仕覆が脱がされ、染付の茶入が現われました。
帛紗を捌き、茶入、続いて茶杓が清められ、美味しい菓子の後なので濃茶への期待が高まります。
茶碗に濃茶が掬いだされるとすぐに馥郁とした香りが満ちてきました。
一口含むと思わず感激して
「なんて香り佳くまろやかな味の濃茶なのでしょう! お茶銘は?」
「「天授」といい、丸久小山園の詰でございます。お口に合ったようで嬉しいです」
(何でも全国茶品評会で受賞を重ねている抹茶で、3倍以上のお値段らしい・・・)
相客のKMさんとTYさんも濃茶「天授」の滋味を堪能したようでヨカッタ!です。



侘びた趣き深い茶碗は高麗三島、ご亭主が三島が大好きとのことで粉青沙器(ふんせいさき)やお会いしたことはありませんがタライ(盥?)ラマさまのお話が伺えて楽しゅうございました。
添えられた古帛紗は、青の織地に格子縞のグラーデーションが繊細かつモダンで、高麗三島茶碗にぴったりです。(志村ふくみさんのお弟子さんの作とか、お名前が・・・)

つづき薄茶になりました。
優雅な蒔絵のある三段引出の干菓子器が出され、一段ずつ違うお菓子が入っていて開けるたびにワクワクしました。

ご亭主好みの茶碗が3つ出され、暁庵は二徳三島(利休所持、三井記念美術館蔵)を思わせる三島茶碗で薄茶を頂きました。
あとの2つは、歪みのある筒形の古染付と、噴出口(こぶ)が2つあるので「吹上」と命名された茶碗です。どちらも個性的で心惹かれる茶碗でした。
最近、歪み、こぶ、虫食い、金継などの綻びのある茶碗がいとおしい・・・と思うようになりました。

拝見に出された茶入、茶杓、仕覆、薄茶器について書いておきたいと思います。
茶入は、小さな湯呑を転用したようなかわいらしい古染付、象牙蓋がついています。
仕覆は、赤い花が染められた印度更紗、新しく作られたそうで、古い仕覆も見せてくださいました。萌黄色の地色に段々模様があり、こちらも上品でステキです。


  脇山さとみさんの作品だと思う・・・玄関の間にて

薄茶器を手に取って、やっとやっと跡見の茶会テーマに確信が持てました。(陰の声・・・遅いぞ!) 
薄茶器は汐汲棗(圓能斎好み)で宗悦作、黒塗の金輪寺で胴に波文があり、蓋に「枩風(まつかぜ)」の文字がありました。
能「松風」が茶会のテーマだったのです。
時雨を思わせる茶杓は、表千家12代・惺斎作で銘「村雨」でした。
この茶杓に出会って、茶能「松風」がご亭主の中で完成したそうです。



最後にあの黄茶色の四方水指を拝見に出してくださいました。
良寛さまのような像が蓋の摘みになっていて穴が開いているではありませんか。。
穴が開いているので「風通し」と名づけられ、作者はご贔屓の女性陶芸家・脇山さとみさんでした。
底を見ると、緑の松と握手しているような雲が描かれていて、能「松風」に登場する海辺の松でしょうか。

Sさまらしい能「松風」に因む愉しい茶会で御茶を頂き、感無量でございます。 
お誘いしたKMさんとTYさんもきっといろいろな刺激を受け、楽しまれたことでしょう。
ありがとうございました!

ご亭主のご趣向を理解するのが遅い正客でしたが、奇しくもこの日の暁庵は大好きな「業平さま」が描かれている帯を締めていました・・・。
松風・村雨の悲恋の相手の「行平さま」ではありませんが、弟の「業平さま」が一緒にSさまの茶会を愉しんだと思い、どうぞご勘弁くださいまし。
近々またの御目文字がありますように心から願っております。 


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