暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

播磨・コルトレーン茶会・・・その2

2018年11月15日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

  庭の石のテーブルとベンチへ続く露地

(つづき)
いつのまにか日は落ちて、腰掛待合の石のテーブルには蝋燭が灯っています。
山の中で夜を過ごしているような心持で、迎え付けを待ちました。

後座の席入りをすると、一層暗くなった茶室の床には花が生けられていました。
照葉、椿、小菊・・・そして垂涎の花入と古い板切れの花台・・・四方花入は一目で揖保川焼・池川みどり作とわかりました。
手づくりの主菓子と干菓子2種が運ばれ、最初の薄茶点前が始まりました。
前回のコルトレーン茶会と違い(・・・と記憶?)、点前の途中からコルトレーンの静かで、物悲しく、時に官能を揺さぶられるような曲が聞こえて来たような・・・なんせ、夢の中の出来事なのであります。

薄茶だけの茶会ですが、ご亭主Kさんの雰囲気が緊張感ある佇まいに変わり、濃茶のような厳粛なお気持ちで最初の薄茶を点てて頂き、客も無言で頂きます。
黒い椀形の高台が小さな茶碗(友人作)、蝋燭の灯りの中で手にすっぽりとおさまり、座に融け込んでいます。2つの黒い茶碗で2服頂きました。
拝見に出されたポルトガルの白い小筥の薄器、形と御銘が個性的な茶杓も始めて見るもので、お道具にまつわるお話はいつも心躍る交遊録、大好きな某家庭茶事の会の武勇伝(?)と共に毎回楽しみにしています。

Kさんのお点前は1年中炉の流し点ですが、違和感を感じたことは全くなく、よくぞこの点前に徹してシンプルかつ客を飽きさせない変化を工夫して続けているなぁ~と感心します。
そういえば、夏はもちろんのこと、1年12ヶ月のバリエーションができているの・・・と以前伺った事が有ります。


  ムラサキシキブ・・・姫路・好古園にて

白髪が多くなったKさんが一心に茶を点てる姿を拝見しながら、
「なんて素敵な、大切な時間なんだろう・・・
 願わくは、八十路になっても九十路になっても播磨の旅に出て、Kさんの点てるお茶をのみたいもの・・・」と思いました。
「お互い歳を重ね、これからもKさんのもとへ通う事が出来たら、なんと嬉しく幸せなことだろう! 歳をとることも悪くないなぁ~」と思います。

渾身の薄茶点前が終わり、緊張感もゆるゆると融けて、月明りの中、庭先の石のテーブルでコーヒー点前をリクエストしました。
こちらの道具組もお点前も斬新でした・・・。
風流な風炉(?)と釜から湯を柄杓でしっかり計って淹れてくださったコーヒーの豊潤な香りとまろやかな味、蝋燭の灯りに照らされた、爽やかな秋の夜のコーヒータイムが忘れられません。

茶の湯の原点に触れさせて頂いた、刺激的な茶会でした。
ありがとうございました!
お互い健康に留意して、お茶を楽しみましょうね。
今後とも末永くお付き合いくださいませ。


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  ワレモコウの残花・・・姫路・好古園にて

(忘備録)いままでに6回、Kさんの茶会へお邪魔しています。その感動を忘れないようにブログに一部書き留めています。よろしかったらご覧ください。

  1.思い出の茶事  一客一亭 2008年12月
  2.あこがれのJAZZ茶会(一客一亭) 2010年11月
  3.Jazz茶会ー2  Moon Bow  2013年10月11日
  4.「どくだみ茶会」-1  2014年6月6日 
  5.夕去りのたけのこ茶会・・・播磨にて  2016年4月19日
  6.播磨・コルトレーン茶会・・・その1   2018年11月2日


播磨・コルトレーン茶会・・・その1

2018年11月13日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

  姫路公園(姫路城)内にある好古園にて (2018年11月2日撮影)


11月2日、播磨在住のKさんのコルトレーン茶会へお招き頂きました。

2年半ぶり・・・6回目(だと思う。詳しくは最後に・・・)の訪問です。
回数を重ねる訳は2つあります。
1つは、Kさんの茶会がとても素晴らしく、参席すると、日頃貯めこんでいた虚栄心、慢心、迷い、自己嫌悪などの塵芥が洗い流され、
「そうだ!周りの事に惑わされず、自分の信じるお茶をやろう」といつも勇気を頂戴するのです。
Kさんの茶会は、私にとって茶の湯の原点であり、四国遍路のような存在になりつつあります。

もう1つは、そんな茶会だからこそ身近な方を連れていきたくなります。
その結果、Kさんの茶会をどのように受け止めるかはその方次第ですが、Kさんのおもてなしの素晴らしさはきっと通じるはず、その方の茶の湯人生になんらかの刺激を受けて欲しい・・・と願っています。

そんな訳で、この度はスウェーデンから帰国中のOさん(次客)と、2度目ですが社中Fさん(詰)を同行しました。



4時過ぎに木々に囲まれ山荘の趣き深きK邸へ到着すると、門からのアプローチに水がたっぷり撒かれていました。
実は前日までKさんの体調を案じていましたので、元気に水撒きする姿が目に浮かび、清々しいおもてなしを嬉しく感じながら玄関へ向かいました。

待合は毎回、場所が微妙に変わるのですが、玄関の上がり框の畳に3つの小さな椅子、廊下の奥に乱れ籠があり、傍の壁に額が掛けられていました。
掛物は英語のようですが、う~ん!読めません・・・前にも英語で禅語のような深い意味の詞が書かれていたことを思い出し、興味津々。

白湯が運ばれ、
「庭の腰掛待合でお待ちください」とご案内がありました。
広い庭に面して石のテーブルと石のベンチ(お気に入りが多いのですが、特にお気に入りです)があり、テーブルにはバリ島の盆、異国の雰囲気を感じるテーブルクロス、灰皿とレトロなマッチ・・・Kさんらしい素敵な設えです。
清められた庭には、緑の苔が露を含んできらきらと輝き、これだけでも大御馳走なのに、折から紅葉が美しい盛りでした。
椅子に座し深々と美味しい空気を吸っていると、まるで天蓋のような紅葉が華やかさを添え、この季節に来訪できた幸せを感じます。


  K邸の蹲踞・・・以前に撮影したものですが
 
ご亭主が水桶を持って現れ、蹲踞を清め、いよいよ迎え付けです。
お互い故障しがちながらこうしてお会いできた喜びを胸に、無言の挨拶を交わしました。

これも大好きな蹲踞をつかい(小袖の蹲踞を連想しながら・・・)、躙り口から4畳半の茶室へ席入りしました。
ご亭主と挨拶を交わし、早速、玄関待合の掛物についてお尋ねしました。
茶友(アメリカ在住の日本人男性)がKさんの茶会へ参席し、感じたことを英語の詩で綴ったものだそうです。
原文をご披露できないのが残念ですが、帰宅してから”コルトレーン茶会”を想い出しながら次のように訳してみました。

   蝋燭の灯りのもと、息遣いを感じるほどの静謐な茶室
   魂を揺さぶるようなサックスの音色
   互いの内面の在りように呼応しあいながらお茶を頂くひと時
   お茶にただ感謝!



床の御軸は、
  下手の
    
      真あり


決して上手な字ではありませんが、味わい深く素敵な書でした。
という字が真ん中に大きく書かれていて、こちらも真ん中、心、内面が大事と言っているようにも思えます。



   玄関近くの待合にて

挨拶が終わると、食事が出されました。
3人分の椅子と特製の小テーブルが運ばれ、またまた一段と進化していました。
我が家の茶事でも、最近は椅子席で懐石をお出しすることが多くなっていますが、こちらでも小間に合わせた特製小テーブルを作り、煮物椀の置台が引きだされる用に工夫されていました。
自分で工夫されていろいろ作られるのも参考になり、刺激になります。

食事は、Kさんお得意のイタリア風でした。
品数は多くないのですが、食材からこだわり客の好き嫌いまで気遣って下さった逸品ばかりです。
心して頂戴し最後は大きなピザ、とても美味しく3人でたいらげました。御馳走さま!
ここで中立、先ほどの庭の腰掛待合で迎え付けを待ちました。(つづく)


      播磨・コルトレーン茶会・・・その2へつづく