麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第202回)

2009-12-20 22:11:46 | Weblog
12月20日


立ち寄ってくださって、ありがとうございます。

正直、本を読む余裕がありません。

今週読めたのは「ベートーヴェンの生涯」(平凡社新書)だけ。
しかも、ものすごいスピードでとばしながら読みました。
「エリーゼのために」は、長く「テレーゼのために」の読み間違いとされてきましたが、じつはやはり、エリーゼという女性がいたこと、また、ベートーヴェンはカントが好きでインド哲学にも通じていたことなど、初めて知りました(それだけ聞くとまるでショーペンハウアーと同一人物のような感じです)。

高校時代、廉価版のレコードでかなり長い時間、ベートーヴェンを聴いて過ごしました。(ブルーノ・ワルターの安いシリーズの「田園」、カラヤンの昔の録音の「運命」「第九」、サンソン・フランソワの三大ピアノソナタなど)。というと、クラシックファンのようですが、ロック、フォーク、ジャズ、古賀政男もさんざん聴きました。でも、やっぱりベートーヴェンもかなり聴きました。大学時代にも。

ポリーニとベームの「皇帝」が出たのは大学時代。でも、なんとなく20歳のころは、モーツァルトを聴きました。ピアノコンチェルト20、21番はとてもたくさん聴きました。大好きです。また、マリア・ジュリーニの「レクイエム」もよく聴きました。小林秀雄が好きな40番交響曲ももちろんいいと思いましたが、どちらかというと「泣かせるなー」という「やられた感」が強く、ものすごく好きではありません(八代亜紀の「舟歌」みたいな感じ)。

その後は難聴になったので、前ほど聴かなくなりました。30歳ころ、よくある話ですが、サティがとても好きになりました。自分でも4曲ほどピアノで弾けました(簡単なアレンジではなくオリジナルです。といってももちろん、誰でも1週間あれば弾くことはできると思います)。

ついでに書けば、一番好きなクラシック作曲家は、ショパンです。
自分で書いて笑ってしまいますが、しかしやっぱりそうです。つぎは、よく知らないけどバッハです。

クラシックギターの作家なら断然バリオス・マンゴレです。マンゴレは、20世紀最大のクラシックギタリストといわれるアンドレス・セゴビアに否定されて(そのせいだけではないのでしょうが)、ずっとマイナーな存在だったらしいのですが、今では復権を遂げています。その推進力のひとつは、セゴビアの弟子のジョン・ウィリアムスがバリオスを取り上げたこと、というのが、なかなか皮肉な感じでいいです。バリオスをひと言で言えば、ショパンのギター版です。と、私は思います。いちおう、一曲だけ、ただたどるというだけなら自分でも弾けます。Cmのプレリュードです。

というわけで、ベートーヴェンは、やはり、若いころに聴いたという感じです。私にとってその音楽は、今はニーチェの「ツァラトゥストラ」の中に閉じ込められているといってよく、ふたつは私にとって同じものです。「運命」を最初から最後まで聴く体力はもはやないのですが、ツァラトゥストラの言葉を読むたびに、それこそ「墓の歌」の墓から解き放たれて、その音楽を聴いていたころの自分のリズムが蘇ってくるのです。

まあ、とにかく、最近では昔の歌謡曲を聴いてじわーっとすることも多いじじいですが、たぶん、かつて聴きまくった音楽は、多くは本の中に形を変えて保存されていると思われます。それでもショパンやバッハのように、今も聴いて、簡単なアレンジ譜でギターで弾き続けているようなものもあります。

ベートーヴェンを聴くことは、もはやあまりないと思いますが、でも、ベートーヴェンのような人間がいたことを、その人に心底あこがれる若い自分がいたことを忘れることはないと思います。

「君の魂の中の英雄を投げ捨てるな。」(ツァラトゥストラ)

まさに、ニーチェさん、あんたのいうとおり。
絶対投げ捨てやしませんぜ。「アホ」いわれてもな。



では、また来週。
コメント
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