鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

夏の夜の夢で収まるか、--曙ブレーキ工業、1日で総発行株式数を上回る前代未聞の取引量を記録

2018-06-16 | Weblog

  今週、東京証券取引所で前代未聞の出来事があった。東証一部上場の曙ブレーキ工業に1日で同社の発行株式数を上回る株式が取引される事態が起こったのだ。発端は同社が13日に世界初の自動車用ブレーキの新構造という製品を発表したことにあるが、これが投資家の関心を呼び、大幅な買い注文を呼び込むこととなったのである。同日の株式取引数は2849万株となったのに続き、翌14日の取引数は1億9870万4700株にも達し、なんと同社の発行株式の1億3599万2343株をも超える事態となってしまった。ここ数年無配で低迷を続けていた同社の株式は一挙に年初来高値を更新するに至った。

 曙ブレーキ工業は好調な自動車業業界のなかでどういうわけか北米子会社の不振からここ3年株式の配当がない状態で、株価も200円そこそこまで落ち込んでいた。それが、この13日の新構造のブレーキという世界初という触れ込みの新製品を発表するや否や、株価は一挙に377円にはね上がってしまった。その余勢を駆って、翌14日には買い注文が殺到し、取引株式数は同社の総発行株式数を上回るほどに膨れ上がってしまった。14日の取引額は時価総額を大幅に上回る701億2100万円となり、全上場会社のなかで任天堂に次いで2番目にランクされた。

 同社の大口株主は1549万5千株を保有するトヨタ自動車はじめ主に自動車業界の会社がズラリと顔をそろえているほか、曙ブレーキ工業も275万株余を保有している。これらを合わせると約35%になるが、こうした大株主が売り出すことはまず考えられないので、13、14日両日に取引した会社、もしくは人のなかには一旦買ったブレーキ株をそに日のうちに売却した会社、もしくは人が相当数いたことが考えられる。1日で1社の総発行株式数を上回る量の株式売買が行われた例がかつて株式市場で発生したことがあるのかどうかはしらないが、曙ブレーキ工業にとってはこれまで1日の株式売買数はせいぜい1000万株だったというから、今回は20倍にものぼることとなる。

 実はこの15日は曙ブレーキ工業の株主総会が開催され、一部株主から「異常な取引が行われたなかに米国のハゲタカファンドのような輩が交じっているのではないか」とに質問が出されたが、同社の荻野好正CFOは「主にデイトレーダーによるもので、買収の意図を持ったものはないと考えている」と答えていた。本当にそうなのかはまだ今後の展開を見ないとよくわからない。13日に発表した新製品が市場に出てくるのは早くて2年後だそうで、市場が期待した通りのものなのかはこちらもまだ先をみないとわからないというのが正直なところだろう。

 15日の曙ブレーキの取引株式数宇は8868万2300株と相変わらず高い水準だったが、株価の方は高値を追う展開ではなく、高値で買った株式をどう売り抜けようかと探っている投資家が多そうな感じとなっている。この決着がどうつくか予想は難しいところではある。ただ、デイトレーダーは個人レベルでなく、おいしそうな企業を見つけては一斉に仕掛けてくることがはっきりしたわけで、今回は曙ブレーキ工業という昔の優良企業のイメージがあり、株価が手頃な会社を見つけては株価を転がして儲けを企んでる手合いが一杯いる、ということだけははっきりとした。

 一部には曙ブレーキ工業が株主総会を控えて、多少の株価上昇の材料にでもなれば、とのねらいから新製品の発表をタイミングよくぶつけてきた、のではないか、と観測する向きもある。そうだとすれば、それにしては大きな”花火”となったわけで、同日の同社の株主総会で提案した買収防衛策の発動にはならないことで収まれば、”夏の夜の夢”ということになるのかもしれない。

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