鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

日本から全国紙がなくなる日は遠からず来る

2009-09-09 | Weblog
 文芸春秋10月号にジャーナリストの佐々木俊尚氏が「大新聞の潰れる日」と題した記事を掲載している。同氏は親書で「2011年 新聞・テレビ消滅」というのを出しており、その主張を敷衍したもののようだが、全国紙を取り巻く環境は目を覆うほどで、潰れても不思議ではない状況であるのは確かである。インターネットの普及と不況で広告が激減しているのがその理由で、各社とも将来展望が開けない事態に陥っており、このままいけば遠からずいくつかの新聞社が倒産することだろう。
 「大新聞の潰れる日」は天下の朝日新聞が同社の社内組織「2020年委員会」が取材体制を東京と大阪の2本社に集約し、全国を九ブロックに分け、従来の47都道府県に隈なく取材体制を敷いてきた体制を改めることにした、と報じている。その最大の理由が業績の悪化で、今年3月期の連結決算で前期の46億円の黒字から139億円の赤字と創業130年以来初めての赤字決算となった。他の読売、毎日、サンケイ新聞でも同じような状況となっているのは明らかで、経済紙として好業績を誇っていた日本経済新聞も今年6月の中間期の連結決算で最終損益が前年同期の59億7500万円の黒字から逆に55億800万円の赤字に転落した。
 新聞そのものが若者からそっぽを向かれて購読されなくなっているのに加え、最大の収益源であった広告が特に昨年のリーマン・ショック以降激減しており、各社の台所を直撃している。佐々木氏は昨年に週刊新潮が新聞各社の購読部数のなかに押し紙と称して新聞販売店に無理やり押し込んでその分の金額を上乗せしている仕組みがある、と公表して、広告主からの反発を招いたこともマイナスとなっている、と指摘する。広告はある限界点以上の売り上げはそのまま利益と結び付くだけに広告の減少はそのまま利益の減少となる。さらに無料で見られるインターネットの普及が若者を中心に読者の新聞離れを加速させた。
 もともと米国には経済紙のウオール・ストリート・ジャーナルを除いて全国紙はない。日本の場合、国土が狭いことと再販制度と宅配制度という悪弊によって全国紙が今日まで存続されてきている。駅で買う一部代金の合計より安い料金で宅配が行われるというのは考えても経済合理性に反する。しかも新聞社ごとに専属の販売店網を構築している。鈍想愚感子の住む溝の口の毎日新聞販売店がいつの間にか朝日新聞の販売店となっていたのを最近知って驚いたが、まず新聞販売店の整理統合が進むのは間違いないことだろう。
 日本の場合、朝日、読売、毎日、サンケイと4つもの全国紙があるのが異常である。いずれもそのうちに朝日新聞がめざしている東京・大阪に拠点を置いた大都市新聞に変わっていかざるを得なくなるだろうし、そのなかでも淘汰されていくことだろう。
 日本経済新聞は電子新聞なるものの開発に取り組み、スタート時の読者60万人と想定しているようだが、社内でも夢物語だと一笑にふす向きがあるほど懐疑的で、とても救世主になるとは思えない。
 自民党政府の一部には新聞社の苦境を救うために公的資金を投じたり、高校生に新聞購読を補助したりする案も出ているとも聞いているが、そんなことをすれば新聞社だけになぜ公的支援の手を差しのべるのか、と批判のあらしとなるのは目に見えている。政府に対して常に批判的な位置に立ってきた新聞各社のレーゾンデートルにも沿わないものでもある。
 ここは新聞各社自らの手で、人件費など諸経費を極力削減してでもスリム化を図り、経営の立て直しに取り組むしかないだろう。
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