元通産官僚の異例の辞任

　凍傷一部上場のAOCホールディングスの坂本吉弘社長が1日付けで辞任した。同社はアラビア石油を傘下に持つ半ば国策的企業ではあるが、期中での突然の辞任に関係者の間に大きな波紋が広がっている。坂本氏は日米交渉で鳴らした元通産官僚で、辞任については「一身上の都合」としか語らず、いまだにその真相はわｋらないまま。仮にもれっきとした東証１部上場企業で、期中で経営責任を放り出して辞めてしまうような株主無視の行為は聞いたことがない。しかも経済に通じているはずの元通産官僚である。いま流行のコーポレート・ガバナンスはどこへいってしまったのだろうか。
　AOCホールディングスは傘下にアラビア石油と富士石油を持つ。先月末に坂本氏が社長を務めていた富士石油の常勤役員会が開かれたが、坂本氏は「外にいるので、先に進めておいてくれ」と言ってきて、出席せず、終了後に現れて、富士石油、およびAOCホールディングス両社の社長辞任届けを提出した。理由については何も説明なく、後継社長となった関屋文雄副社長があとで電話で聞いたところ、坂本氏は「一身上の都合。それ以上言うこともない」としか答えなかった、という。
子供の会社経営遊びでもあるまいに、だだをこねるような辞任の仕方は通常考えられない。少なくとも株主、従業員に対して説明責任がある。
　坂本氏は通産省の通商政策局長や通産審議官を歴任し、自動車、半導体での日米交渉を取り仕切った高級官僚である。アラビア石油は故山下太郎が設立したアラビアなど中東から原油の開発輸入を行う国策会社で、特に石油に調達先のない日本にとっては貴重な使命を帯びている。これだけ原油価格が高騰しているなかで、ますます常用度は増している。そんなことは百も承知の元通産官僚であるのに、不可解である。
　AOCホールディングスはとりあえず、関屋副社長が社長に昇格して、経営の舵取りをするが、辞任が不可解だけにサウジアラビアやアラブ首長国連邦など関係先に説明の仕様がなく、なんとなく異様なムードを抱えたままの船出となり、日本人に対する信用、イメージが変わってきて、今後の経営に支障をきたすようなことがない、とは断言できないだろう。
　最近、スポーツの世界でもどこでもいわゆる本物がいなくなってきている。プロのプロたるところがなかなか、見られなくなっている。プロがアマチュア化している。経営の世界にもそれがいえる。元通産官僚といえども経営のプロではない、ということなのだろう。
　お粗末な経営者がいあｔ、ということか。