鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

株券の電子化の実施に疑問あり

2008-09-30 | Weblog
 来年1月5日から株券の電子化が行われ、市場から印刷された株券がなくなる。インターネット時代に対応したものだが、ここへきてリーマン・ブラザーズの倒産などで証券市場が大きく揺れているのに、果たして大丈夫なのだろうか、疑問が残る。既存の株式会社は対応できるのだろうが、新規に立ち上げようとする企業の場合、物理的な株券を発行せずにやっていけるものなのだろうか。オレオレ詐欺がようやく下火になってきたのに、今度は株券の電子化をきっかけに新たな詐欺事件が発生するのではと懸念されてならない。
 株券の電子化は03年9月の法制審議会で、株券不発行制度を導入するための所商法(現会社法)等の改正案の要綱がまとめられ、04年6月に「株式等の取引に関する決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律」の改正が成立し、09年6月までに一斉に「株式不発行制度」に移行することが決まり、09年1月から実施の運びとなった。米国などんぼ例にならったもので、国際的には一般的になりつつある制度でもある。
 ただ、欧米など株式会社に永い歴史を持つ国々では株式不発行制度を導入しても混乱はないだろうが、日本の場合、たかだか100年の歴史しかなく、はなはだ心もとない。株券が不発行となれば、既存の株式会社は証券会社への預託をすることになるが、日本の証券会社にそうした貴重な役割を担わせるだけの信頼があるのだろうか。タンス預金ならぬタンス株券を手離さない投資家は結構いることだろう。
 上場会社の場合は証券会社の預託ということで対応できるかもしれないが、未上場会社の場合はすべて電子化されたら、何を以て株式保有されていることを証明するのか、出資者は不安で仕方ないことになる。きちんと株式保有状況が把握されているか、常に不安を抱えていることになりかねない。
 それだけでなく、新規に株式会社を興そうとする場合、株式がないと出資したことを証明するものがなく、単に印刷された紙切れ一枚では公的な証拠になりうるのか、不安がつきまとうことだろう。結局、株券に替わるようなものを発行さざるを得ないのではなかろうか。
 さらには折からのスブプライムローンからみの世界的な金融不安で、いま証券市場が急速に萎んでいる。先進の米国では大手の証券会社が倒産、もしくは統合で屋台骨が揺れている。こんな中で証券不発行制度どころではないのではなかろうか。
 いずれ、株券の電子化は急遽、取りやめ、ほしくは実施を延期することになるに違いない。もともと日本には不向きな制度であるのには違いないからでもある。
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