鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

シンデレラとなった荒川静香

2006-02-25 | Weblog
 確か、ガリバー旅行記かなんかに「一夜明けたら世の中が一変していた」という件があったが、そんな気分を味わったのが、トリノオリンピック女子フィギア金メダリスト、荒川静香だろう。昨24日は一日、日本中がまさに荒川静香デーだった。朝から晩まで荒川静香の今や荒川静香のトレードマークのイナバウア、後ろへ反り返って滑るシーンを流しまくった。号外が出るのはもちろん、ニューヨークタイムズなど海外各紙も荒川静香を「クール&ビューティ」と讃え、演技小泉首相お得意のお祝い電話まで飛び出し、お祝いと喜びの渦に包まれた。このままいけば、日本は30年振りに冬季五輪メタルゼロになりかねないところを救っただけでなく、日本体育協会関係者の責任を問われかねない事態をも吹っ飛ばした。神が荒川静香にキスをした、とNHKアナウンサーは言ったようだが、荒川静香こそが日本中の暗雲を吹き飛ばす女神となった。
 ショートプログラムで3位につけた荒川静香のフリー演技はまさに完璧だった。本人があとでインタビューに答えていたが、「とにかくメタルのことなんて考えずに、ただ楽しく滑れたらいい、と思っていた」と述懐しているように無心で臨んだのが、良かったのだろう。ショートプログラム1位の米国のサーシャ・コーエンは2回転倒したし、同2位のロシアのイリーナ・スルツカヤも1回転倒した。最終演技者だったスルツカヤは最初から緊張のためか、身体が固くていつものスピードがなかった。荒川静香の演技があまりにも素晴らしくて圧倒されていたのかもしれない。女子フィギアとしてはアジア初の金メタルで、日本の女子としては98年長野五輪のフリースタイルスキー女子モーグルの里谷多英以来2人目という快挙である。
 一夜明けて、荒川静香も金メタルの実感が湧いてきたようで、メタリストが中心になって滑るエキジビションで観客の声援を受けて、喜びを感じた、という。改めて荒川選手を見ると、といってもテレビ、新聞の画面・写真を通じてだが、色が白くて、スタイルもいい秋田美人である。クール&ビューティがぴったりである。五輪前はどうかすると、能面のような感じがすような時もあったが、金メダリストとなったいまはそんな感じはない。今後自信が備わってくれば、もっといい表情となってくることだろう。
 ただ、金メタル確定後のインタビューを見ていて感じるのはとても素直なことと、世の中を渡りきるだけの器量はいまひとつ感じられないことだ。素直なことが今回の金メタルにつながったと思う。しばらくは金メダリストとしてマスコミの注目を集めることで過ぎていくことだろう。鈍想愚感子の関知するところではないかもしれないが、問題はその後だ。女子フィギアの世界で活躍することでどんな人生が開けていくものなのか、よくわからないが、それだけに里谷多英のように自らつぶれてしまうようなことが心配だ。よきコーチなり、マネジャー的な人が近くにいて、適宜アドバイスすることが必要だろう。
 荒川静香選手の所属する会社が堤義明氏がかつて率いたプリンスホテルなのは大きな皮肉でもある。親会社の西武ホールディングスの後藤高志社長は早朝のテレビ観戦の応援にも顔を出し、金メタルを取ったあとに「グループのシンボルとしてこれまで以上のサポートをしていきたい」と事実上の終身契約を示唆する発言をしている。その発言にうそはないと信じたいが、大事なのは本人が何をどうしたいか、はっきりとビジョンを持つことだろう。 
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