惜敗というが、差は歴然としていた日本チームのＷ杯対オランダ戦

　１９日、南アフリカ共和国でのＷ杯で日本期待の日本チームがオランダと対戦し、１対０で敗れた。初戦の対カメルーン戦を１対０で勝利した途端、にわかにサッカー熱が高まり、オランダ戦にも勝って、１次予選を突破するのだ、といわんばかりの様子で、戦う前から異常に勝利ムードが高まっていた。２０日付けの朝刊各紙はいずれも「日本惜敗」としていたが、司令塔のない戦いぶりを観た者からは完敗としか思えなかった。２４日のデンマーク戦も同様に負けることだろう。
　１９日の対オランダ戦は最初、テレビ朝日で見ていたが、余りにも日本贔屓の解説が耳について、ＮＨＫＢＳに切り替えた。前半は当初、オランダが華麗なパス回しで、日本チームを翻弄している感じがして、国際サッカー連盟の世界ランキング４位と４５位の差は歴然としていた。それでも日本チームは必死にくらいついて、見せ場はつくってくれた。前半は両チームとも体力に余裕があるので、対等のゲーム運びはできるものなのだろう。
　後半に入って、果たしてオランダチームは開始早々から攻勢に出て、日本ゴールを度々襲い、８分過ぎにＭＦスナイダーのミドルシュートが決まり、決定的な１点を奪われた。後半になって、応援用のブブセラの音がうるさいので音を消してテレビ観戦していたが、見事なシュートだった。解説を聞いていると、ＮＨＫＢＳでも日本チームのことばかり言うので、ついつい日本贔屓になってしまう。その点、消音で見ていると、冷静に観戦できて、両チームの戦いぶりや実力がよくうかがえる。失点後の日本チームは相手ゴールに数次にわたり襲いかかったが、司令塔のいない攻めは効果的とは思えず、ゴールを割るまでには至らなかった。得点は最小の１点であったが、その差は歴然としていた。
　初戦のカメルーン戦をたまたま勝ったことから、いけるという雰囲気になっていたようだが、オランダとカメルーンでは格が違うことは頭に入っていてもそれが戦術に結びつかなかったようだ。守りではきちんと体制を決めていたようだが、攻めではそれが見られなかった。カメルーン戦では岡田武史監督のいうことを聞かなかったことが幸勝を呼んだともいわれたが、カメル－ンはエトオ選手だけのワンマンチームだったから、勝てたのだろう。オランダにも同じような戦法では勝てないことはわかっていたのしても、それがよく見えなかった。
　サッカーのテレビ中継を見たのは久しぶりだったが、Ｗ杯にしては会場の上から俯瞰したような画面ばかりで、迫力のあるシーンがあまりなかったような気がした。試合中、選手の顔がよくクローズアップされていたが、日本チームの選手は疲れたような顔をしていたのと、あまり賢こそうな顔をしていなかったのが気になった。オランダ選手の表情はよく読まなかったが、感情が表情にすぐ表われるというのはマイナスではないか、と思った。
　文芸春秋のスポーツ雑誌、ナンバーの臨時増刊６月２５日号で作家の奥田英朗氏が「日本人サッカー不向き説」を寄稿し、「世界中で日本人ほど行列に行儀よく並んでいる国民はいないことをあげて、サッカーはそれではうまくならない」と指摘している。人と対立することを何とも思わない人種と競争して勝てるはずがない、とも断じている。所詮はそういうことなのだろうが、それでも日本人はお祭り好きなので、サッカーを担いで騒ぐ人は引きもきらないということなのだろう。

追記　１０中８、９負けると思っていた２５日未明の行われた対デンマーク戦を３対１で勝ってしまった。明るい話題のないなかでの朗報といえなくもないが、どう考えても勝てる要素がないのに勝ってしまった。今Ｗ杯は優勝候補のフランス、イタリアが第１次リーグで敗退してしまうなど番狂わせが続いている。日本の勝利もそのひとつとみられなくもない。Ｗ杯の開催地の南アフリカ共和国が南緯３０度くらいで予想外に寒いそうで、まず中東アフリカの熱帯のチームに実力発揮ができていない。それとＥＵの経済危機でヨーロッパのチームにも影響が及んでいるようだ。日本の好調さは監督の采配を無視していることがいい結果につながっているのではんかろうか。決勝リーグでは第１戦のパラグアイ戦で敗退するのはまず間違いないが、ここまでで１２分以上の戦いといえる。