鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

若尾文子にピッタリの当たり役「華々しく一族」

2008-11-17 | Weblog
 16日は東京・銀座のテアトル銀座で公演中の若尾文子主演の演劇「華々しき一族」を観賞した。2、3週間前にNHKの「この人にトキメキ」に若尾文子が出演し、この劇のやると言っていたのを聞いて、その後の新聞の劇評を見て、見に行こう、と思った。故杉村春子の演じたもので、演出の石井ふく子が若尾文子用に多少手を加えた、という。3日前に直接劇場窓口に出向き、空席状況を聞いたら、空席は6席しかなく、かろうじて確保できた。
 会場に入ると、若尾文子人気かお年を召した女性でいっぱいで、前の列の端っこに石井ふく子が座っていた。幕が開くと、左手で主人公諏訪の連れ子の美がアイロン掛けをしている。そこへ映画監督、鉄風の門人、須貝とその須貝に思いを寄せる鉄風の娘、未納が手にラケットを持ったまま、入ってくる。須貝役の松村雄基が登場した時に拍手が起きた。あとで、鉄風役の西郷輝彦、若尾文子が登場した時にも拍手が起きたが、新橋演舞場、明治座あたりの新劇のノリである。
 未納と須貝はテニスでの勝敗を話し合いあいながら、いつしか話は美の恋人はだれか、という話になり、美は言葉を濁す。そこへ鉄風の息子、昌充が帰ってきて、須貝とも同じような話になる。昌充は美への思いを打ち明け、須貝に恋の成就を頼む。
 そんなこととは知らない鉄風と諏訪は須貝が養子の形で美と結婚するのがいい、と思い、諏訪が須貝のその旨、聞いてみることにする。ところが、田舎から転送されてきた手紙で急に田舎へ帰らなくてはならなくなった須貝は出掛けるばかりの出で立ちで話に応じる。須貝は美との結婚話に「その気はない」と言って一旦は断るが、急ぎとあって立ち去りかけた諏訪が階段を登り、踊り場にさしかかった時に「結婚したくない理由は奥さんにある」と諏訪への思いを打ち明ける。
 びっくりした諏訪は「とんでもない」とばかりに須貝を説得にかかる。10年若ければそうしたこともありえたかもしれないが、とんでもないことだ、と一蹴する。それでも須貝は思いをわかってもらえるだけでもいい、と言い放って故郷へ旅立っていく。
 複雑な思いのとらわれた諏訪は結局、須貝に家から出て行ってもらうことにしよう、と思う。そう思って、美と未納と話しているうちに美が好きな人は昌充だ、と打ち明けられ、夫の鉄風とびっくりする。そして、諏訪は須貝から思わぬことを言われたと告白する。驚いた鉄風は離れの小屋へ尺八を吹きに行く。
 そこへこっそり、旅立ちの出で立ちの須貝が現れ、諏訪に「今生のお別れ」と口走る。縁起でもないと、事の次第を問い質した諏訪に対し、須貝は実は田舎からの連絡は召集通知で、これから善通寺の連隊に出頭しなくてはならない、と打ち明ける。先日は赤紙をもらってつい、かねての諏訪への思いをぶちまけた、と心情を吐露した。
 いきさつを含めすべてのことを理解した諏訪はなんとしても生きて帰ってくるようにと須貝に言い、戦場へ送り出す。須貝の置き手紙で出征を知った鉄風は悲しみに暮れたところで幕となる。
 原作ではただ、気づまりから須貝は去っていくのみであったが、この新作では召集令状が来たという点を新たに書き加えたという。単に去るより、この方がリアル感があっていい、と思った。また、故杉村春子の旦那であった森本薫が愛する人のために作った戯曲であるが、妖艶な主人公を杉村春子が演じるにはやや無理があった。その点、若尾文子にはピッタリの役で、まさに当たり役といえそうである。
 千秋楽の割にはカーテンコールが1回しかなかったのが不満だったが、内容的には面白く十分に満足できた。

 
  
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1 コメント

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はじめまして (あんず)
2009-01-04 21:27:16
私も『華々しき一族』をル・テアトル銀座で見ました。とっても良かったですね。
こちらのブログを発見してついついうれしくなって投稿してしまいました。
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