鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

神戸製鋼所の社長・会長辞任劇の裏に一体何があったのか

2009-02-11 | Weblog

 10日テレビを見ていたら、突如、大手企業の首脳らしい人が記者会見の席上、頭を下げている画面が映った。汚染米販売で三笠フーズの冬木三男社長に続いて大分キャノン工場建設にからんでコンサルタント会社、大光の大賀規久社長が脱税容疑で逮捕されたので、また企業のトップが不祥事でも起こしたのか、と思ったら、神戸製鋼所が地方議員の選挙活動で経費の肩代わりをした、というもので、社長、会長がそろって辞任するというから驚いた。どう考えても両トップがそろって辞任するほどのことはないのにと思ったからである。
 翌11日の新聞を見ると、神戸製鋼所の労働組合が推薦した地方議員候補7人の後援会に対し、選挙経費の一部を肩代わりしていて、02年以降計8回約2700万円にのぼり、企業から後援会への献金を禁じる政治資金規正法に抵触する疑いがある、という。同社の加古川、高砂、長府の3事業所で県議、市議7人の後援会の事務消耗品や看板代金、コンピュータ関係の経費を負担していた、という。7人はいずれも神戸製鋼所の社員やOBで、昨年11月の国税当局の税務調査で発覚した、ともいう。
 10日会見した同社の犬伏泰夫社長は「関与した社員は法律が改正されたことは知っていたが、法律に触れるという認識はなかった。会社としても具体的内容まで把握していなかった」と正直に告白している。7年も前から継続して行われていることで、担当者が認識していないことがトップまで伝達されるとは思われない。コーポレート・ガバナンス上、政治資金規正法を順守することは企業なり、市民として必要なことではあるが、経緯からしてトップが会見で「申し訳ありませんでした」と」頭を下げれば済む問題ではなかろうか。
 それが、自身だけでなく、水越浩士会長まで道連れにして4月1日付けで辞任までいってしまったことに疑念が残る。鉄鋼業界では昨秋の世界金融危機以来、需要がダウンし、09年3月期の業績の下方修正が相次いでおり、神戸製鋼所もこの3日に最終利益を従来予想の800億円から130億円に修正したばかりではあるが、両首脳がそろって責任をとって辞めるほどではない。
 となると、業績以外に社長自らが辞めたくなるような理由があるのではないか、と勘ぐられる。個人的なスキャンダルだったら、会長まで道連れにすることはないだろうから、会社全体に関わる不祥事があるのではなかろうか。もうひとつ考えられるのは社長と会長の間に対立があり、かねてから会長を切ろうと思っていたが切れずにいて、いい機会だからそろって引くことにしたということだが、会見の場に2人そろっていなかったことがそう思わせる。
 後任には佐藤広士副社長を発表していることから、覚悟の上での辞任であり、着々と準備をしてきた辞任劇のようでもある。問題は社内に対する説明をどうしているかで、仮に新聞発表と同じような内容ならそれを聞いた社員は恐らくモチベーションが下がることだろう。「いま大事な時期にトップは何を考えているのだろう」と訝るに違いない。そしてトップは会社の将来をきちんと考えてくれているのいるだろうか、と不安になってくるに違いない。そうした社員がどう思うかを考えたうえでの辞任だったのか、直接、犬伏社長に聞いてみたいところだ。
 実際、このその背後に一体何があったのか、想像の域を出ず、今後の続報を待つしかないが、いつもながら大企業の役員室のなかは伏魔殿である。

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