鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

喜劇でありばがら最後はホロッとさせられた「嫁も姑も皆幽霊」

2009-02-03 | Weblog
 2日は武蔵中原のエポック中原で行われた演劇「嫁も姑も皆幽霊」を観賞した。かみさんの友人が入っている川崎市民劇場の定期公演で、行けなくなった代わりにかみさんと一緒に行った。劇団NLTに田村亮、音無美紀子、鳳八千代が加わっての喜劇で、幽霊をどういう形で登場させ、話をもっていくのか、興味深かったが、最後はホロリとさせる人情喜劇として楽しませてくれた。
 「嫁も姑も皆幽霊」は東京のとある街で、和菓子屋の御曹司は稼業も継がず、流行作家として、最近もらったばかりに若い奥さんと連れ歩いて、今日も町内のお寺でお墓の取り壊しが始まったとして檀家一同が集まっているのにどこへ行ったのか、わからない。町内会長はじめみんながやきもきしているのを尻目に奥さんといちゃついている。そこへ出版社の編集者も現れ、最近の小説の出来がよくないことをこぼすが、件の御曹司は一向に気にしない。みんなが帰ったあとで、早速買ってきたワインを妻と飲もう、とする。
 ところが、にわかに空模様がおかしくなり、雷鳴が轟き、ワインを飲もうとすると、数年前に亡くなった母親と3年前に亡くなった先妻を奉ってある仏壇の扉が開く。おかしいな、と思って閉めると再び開く。何回も繰り返した後に、遂に音無紀美子演じる先妻の幽霊が白装束で登場する。若い後妻は腰を抜かさんばかりに驚くが、先妻の幽霊はそんなことは知らぬと傍若無人にこの世に来られたことを喜んで飛び跳ねる。御曹司もこんなことがあるのか、といぶかりながら対応に苦慮する。
 そしてその後に先妻を追いかけてきた鳳八千代扮する母親も幽霊となって白装束で登場する。これには御曹司は大喜びで、先妻とはうって変わって大歓迎する。さらには先妻の11歳で亡くなったという弟までが一緒に地上に舞い降りてくる。
 困った御曹司はまずは人目につかないようにと対策を講じながら、なんとか無難に納めようとするが、隣の家にも亡くなったおばあさんが幽霊で出てきたとあって、ドタバタしながら徐々に幽霊のある生活に慣れてくる。白装束でばく、普通に着物を着て振る舞っているとつい、幽霊であることを忘れさせてもくれるが、一方ではこれは現実ではない、と思う気持ちがどこかにある。
 出版社からは連載の打ち切りを通告されたところへ、呼び寄せた息子が帰ってきて、母親と再会し、喜んだり、母親が和菓子屋の番頭に後妻の躾を頼んだり、隣の家の家庭内不和などの小話が織り込まれ、物語は進んでいく。
 そして、お寺の住職が自分の家の墓を壊して、亡くなった和尚さんが出てきて、幽霊の正体が判明し、御曹司の家族そろって花火に親しんだところで、幕となる。結局、幽霊はこの世への未練があって舞い戻ってきたことが打ち明けられ、最後は御曹司が稼業の和菓子屋の経営にも力を入れる決意をするところが落ちとなっている。
 喜劇でありながら、観た者に何かを感じさせる楽しい演劇であった。

 
コメント
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