prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌」

2021年01月17日 | 映画
アメリカの最貧困層からなんとか脱出した人のかなり評判になった自伝の映画化。

ただホワイトトラッシュの殺伐としたド貧乏な雰囲気はジェニファー・ローレンスの出世作「ウィンターズ・ボーン」、もっと遡るとジョン・ブアマンの「脱出」の方が出ていたように思う。

良くも悪くもスターで優れた演技者が主演したことで、上手いことは上手いけれどかえってきれいごと作り物になったような印象。
ロン・ハワードの演出も、もともとのハリウッド的な穏当さがヌルさにつながった感。

グレン・クローズがモデルの祖母に驚くほどそっくりなメイクで登場。




1月16日のつぶやき

2021年01月16日 | Weblog

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編

2021年01月16日 | 映画
アニメのシリーズの方は全部見て、原作マンガの方は十巻まで読んだところで見参。
だから基本的設定やキャラクターについては見てわからないことはなかった。

列車と映画というのは相性が良くて、走り出したらコースを変えることはできず、いずれは止まらなくてはならないという点で、人生のメタファーみたいにもなる。

そしてしばしばありえたかもしれない自分の人生を夢の中で繰り返し、そのたびに家族が皆殺しにされたただでさえ死ぬ辛い体験を何度でも繰り返さなくてはいけない。
このあたりの厳しい、胆力精神力といったものを超えた力の表現が力強く新鮮で興奮させられる。

列車全体が鬼になっているという設定もどこか思い当たるメタファーとして刺激的。

大ヒットしたものから世相を読みとこうとするのは後知恵にしかならないからやらないが、なるほどだてにヒットしたわけではないなと思う。

タイトルに脚本UNFORGETABLEと脚本制作UNFORGETABLEと個人名抜きの制作会社名で二回出たけれど、どういう体制と権利関係で作られたのだろう。なんで二つに分かれたのか。






「おとなの事情 スマホをのぞいたら」

2021年01月15日 | 映画
仲良さげないい歳をした男女が集まって、遊びで各々のスマホを出してそこに来るメールや呼び出しをいちいちその場全員にオープンにする、という本来ならタイトル通り“おとなの”一筋縄ではいかない裏表の顔のコントラストを見せるドラマのはずなのだけれど、これがどうなってるのだろうと思うくらい平板な出来に終始した。

セットのセットくささといい、芝居の追い込みかたといい、役者は一応揃っているはずなのだけれど、びっくりするくらい幼稚。
日本の風土のせいだろうかと首をひねらざるを得ない。

スマホに書きこまれた個々人の秘密が暴かれるのだから意地悪で悪趣味になるのは当然なのだけれど、それを扱うのにセンスがないとどうにもならなくなる。

ゲイであることがバレてしまうのを笑いにするというのも今どきどうかと思うし、一応フォローしているのもとってつけたよう。





「マ・レイニーのブラックボトム」

2021年01月14日 | 映画
原作オーガスト・ウィルソン。デンゼル・ワシントンが舞台で主演しトニー賞を獲得し、さらに製作監督主演で映画化した「フェンス」の原作者でもある。

詩的なダイアローグとアメリカ黒人の日常生活の市民的リアリズム、さらにはルーツであるアフリカの地と血にも想像が広がる射程距離の長い作劇。

オープニングでヴァイオラ・デイヴィスが歌と踊りのパフォーマンスを見せるところで一気に引き込まれる。森の中を走ってくる黒人少年たちが、一瞬逃亡奴隷かと思わせる。
対してこれが遺作になってしまったチャズウィック・ボーズマンがトランペットの指の動きをマスターしてアーティストとしての誇りとそれを白人企業家に買い叩かれる屈辱を鮮やかに見せる。今さらながら、なんという損失か。

一見してわがままでがめつく傲慢なスターに見えるマ・レイニーが、一歩間違えたら黒人で女だから人間扱いされないところで、人間としての敬意を要求し続けるぎりぎりのところにいるのが、涙で濃いマスカラが流れたようなメイクに見せる。

同時に配信されているメイキングも見もの。




「燃えよデブゴン TOKYO MISSION」

2021年01月13日 | 映画
久しぶりに香港映画らしい本格的カンフーアクションなのだが、監督は日本人の谷垣賢治。とはいってももともと香港映画界でスタントからアクション監督をつとめ「るろうに剣心」のアクション監督で日本映画のアクションの基準を変えた人とあっていとも自然に香港と日本を股にかけている。

明らかに歌舞伎町を思わせていかにも日本らしくはあるが、およそコピー的な再現ではないアクションを展開させやすく設計されたであろう大セットが秀逸。
外国人から見た変な日本風ではあっても、知っていて誇張しているのがわかって違和感はない。

日本らしく魚市場を舞台にしたアクションが展開するが、豊洲ではなく築地というのがまたファンタジー。

コワモテの印象が強いドニー・イェンだが、本当に太ったわけでなくメイクでぽっちゃりして太縁のメガネをかけると、なんとも可愛らしい。

冒頭に出てくる東京タワーは本物ではなくセットとCGによるものですという断り書きが出るのだが、わざわざ断るようなことか?
アクションが演じられるのが安全性を損なうような印象を与えるといった理屈なのだろうか。

出てくるテレビがSONY製というのが珍しく妙になつかしい。




「新感染半島 ファイナルステージ」

2021年01月12日 | 映画
家族離散というのは韓国映画からは外しようがないモチーフなのだろうなと思う。
特に母に娘二人という家族構成がゾンビものに出てくること自体珍しくないか。
これに祖父が加わるわけだが家父長的な権威とは無縁で、女たちがみんな強いのは今ならでは。
ラストに出てくる国連軍の代表の扱いにも共通している。

光と音を使ってゾンビを誘導して利用するあたり、ジャンルとしてのゾンビものとはちょっとずれた感じはあるけれど、ゲーム的な趣向として面白い。
ゾンビたちの群れとしてのボリュームとスピード感は前作にも勝る。

中盤から後は「マッドマックス2」的な世界観になり、カーチェイスが主な見せ場になる。

ただ勢いで見せてる分、描写が荒っぽかったり、キャラクターの殺しかたが軽くなってるところは散見するのは残念。





「出国 造られた工作員」

2021年01月11日 | 映画
ベルリンを舞台にした韓国製エスピオナージもの。
徹底して家族にこだわるのが韓国製らしい。

クライマックスの人質交換?場面の風景に既視感があるのだが、同じ場所だろうか。





「天外者(てんがらもん)」

2021年01月10日 | 映画
三浦春馬の遺作ということでかなり言いにくいのだが、この主人公が具体的に何をどうしたのか、がわかったようでよくわからない。

身ぶりやムードとしてはわかるのだが、それで納得するわけにはいかない。




「映画 えんとつ町のプペル」

2021年01月10日 | 映画

ウソみたいだけれどキングコング西野って知らなかった。
これについて話そうとすると、製作費の集め方、商売の仕方の話になって映画の中身の話にしにくい。

動画、美術のレベルは高い。
悪役が日本的な造形になっているのはHELLO WORLDみたい。

どうやって父親が行方不明になったのかボカしたままで、アルチンボルトを明らかに思わせるキャラクターが父親的な存在として絡むわけだが、これが父親の化身であることがわかるっていうのはドラマとすると全然進まず足踏みしていることになる。





「私をくいとめて」

2021年01月10日 | 映画
おひとりさま暮らしが身についている三十歳の女性がもっぱらもうひとりの自分(というのか)を相手におしゃべりを続けるのだが、やりとりする声の主が男というのがまずユニーク。
よくある寂しいとか彼氏が欲しいとかいうのではないのがこれではっきりわかるし、第一好意を互いに感じる年下の良い男林遣都が出入しているのだから。

ずうっと一人で喋っていたら一歩間違えると危ない人だが、声相手とはいえ他者とのやりとりとして成立しているのだから、のんさんというのも不思議な役者。
とはいえ、ときどき自分を抑えきれなくなって暴走するのだが、これまたキレるといった安直な形容にはまらない。

若い男女が一緒にいたらどうこうといった型にはまらない微妙なニュアンスが全編にわたる。
ただ丹念すぎて2時間20分というのはさすがに長く感じる。

とにかく最初から最後までよく食べます。テレビはお飾りみたい。見るとするとそのそばの海老の天ぷらの模型の方というのが、ちょっと典型的。




1月9日のつぶやき

2021年01月09日 | Weblog
 

「Swallow スワロウ」

2021年01月08日 | 映画
画面作りが色彩といい構図といい、さりげない省略を効かせた編集といい、端正そのもの。
その端正さ自体がスリルになっている感もあって、初めのうちどういう展開見せるのか見当がつかない。

おそろしく眺めのいい家のたたずまいの中で、新婚の妻がじりじりと外と中から自分でも気づかないうちに傷をさらけ出す、あるいは傷つける。

異物を呑み込む癖というのは実際に結構あるらしいし、関係あるのかどうか知らないが自分も悪夢の中で異物が喉に押し込まれる、あるいは喉から出てくるといったことが何度かあった。

その原因である出来事を語らせたから後、前半の想像を刺激する描き方をセーブする感はある。




「ザ・ゴキブリ」

2021年01月06日 | 映画
「ゴキブリ刑事」の続編なわけだが、話の連続性はない。
天津敏が出てくると急に東映っぽくなる。
前作に比べると少しお色気サービスが増えた。
ラブホの回転ベッドが回転しているところが見られます。

沖雅也の出演が目を引く。この映画の前の年の1972年にテレビの「太陽にほえろ!」でゲスト出演(のち76年からレギュラー化)した縁からだろう。

テレビの石原プロ作品と出演者も見せ場の作り方もかぶっている感じ。
通常だったら映画でやるようなスケールのアクションをテレビでないとできないみたいな状況がうかがわれる。


「ゴキブリ刑事」

2021年01月05日 | 映画
すごいタイトルだなあ。
ただし、刑事がゴキブリというよりゴキブリのような犯罪者を相手にする刑事という意味。ダーティハリーに近い。
というか、あからさまにダーティハリーの影響下にある一作。
ハリーの日本公開が1972年これの公開が73年。

石原プロ製作だけあってハデというかムチャなカーアクションは今では再現不可能な見ものです。
というか、石原プロ作品とすると劇場用映画はこれと続編の「ザ・ゴキブリ」が事実上の打ち止めで、「大都会」などテレビに軸足を移した、移さざるをえなくなった時期の作品。

渡哲也の追悼放映だったのに加えて、先日亡くなった小谷承靖(つぐのぶ)監督のにもなってしまった。

 
コンビナートなどが見える開発中のがらんとした風景も70年代前半という時代を物語る。

オープニングの未明から朝にかけての光の変化を捉えた撮影が秀逸。
撮影監督の金宇満司は石原プロの常務でもあったのを考えると、常務が撮影してるのかとなんだか可笑しな気分になる。

女性のメイクや音楽はもろに時代が出た。
渡哲也のもみ上げがやたらふさふさしているのがゴルゴ13みたい。