「主婦マリーがしたこと」と話の内容がそっくりなので驚いた。舞台になっている時代も1943年に対してこれは1950年と近いし、石鹸水を胎内にポンプで送り込むという中絶の方法(げっ)も同じ。違うのは、ヒロインが善意の塊で旦那もいい人というところ。
戦争が背景になっていて人が日常的に殺しあっていた時代に、人助けで中絶した女性だけが罪を問われたという矛盾も作り手は意識しているかもしれないが、ちょっとはっきりしない。
主演のイメルダ・スタウントンほかの演技の水準の高さはすごいが、背景の説明的な描写がなく、今の日本の感覚だと中絶がそれほどの罪という感じがしないので、各人がどんな受け取り方をしたのか今ひとつ掴めず、克明な綴り方を見せられたみたいな曲のなさは免れない。
(☆☆☆★)