prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「恐怖」

2011年07月28日 | 映画
「脳のなかの幽霊」という脳科学本のさきがけになった本があったが、ここでは「本物」の幽霊と、脳の中に投影された像としての幽霊とがかわるがわる交錯しながら現れてくるといった印象を受ける。

本物の幽霊というのも妙な言い方ではあるので、存在を証明できるものではないし、またすべては幻想や思い違いと解釈してところで存在を否定できるものでもない。「イメージ」が現実を侵食してくるのは「リング」のテレビ受像機から貞子が具現化して這い出てくるシーンに代表されるが、イメージ=現実といった主客二元論では幽霊は捉えられない。
不特定多数の間で存在が合意されているもの、とでもいったありようで、主に心霊写真の写り方を梃子に、なぜこう写っていると幽霊に見えるのか、という合意を探り幽霊の「リアリティ」を追求してきたのが、いわゆるJホラーの主導的な方法論だった。

脳のニューロンの一種に、自分の行動とまったく同じように他者の行動に対してシンクロして興奮状態になるミラーニューロンというのがあるのだが、ここでの発想の基本には、脳の中に投影された主観的な像として存在している世界とは別に、他者の存在と無意識にシンクロしている世界が脳の中に別に平行して存在している、といった世界観があるように思う。

ただ困るのは、どちらも映像化=対象化してしまうと、脳から外に出てしまうから、どこが違うのかわからなくなること。

確固したものと思われた拠って立っている「現実」が崩壊するのは恐怖を伴うだろうが、ここではあらかじめ三人称的な「現実」は無視されているので、恐怖は置いてけぼりをくうことになる。

眼高手低というのか、あまりに先に突っ走りすぎ、という観は否めない。
(☆☆★★★)

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