prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「凶悪」

2013年10月20日 | 映画
キャスティングの勝利。ピエール瀧、リリー・フランキー、ジジ・ぶぅとか軽い名前で死ぬほどハードな加害者や被害者をやっているのが、怖いのと同時になんだか可笑しい。

老人をいたぶるところがなんだか「時計じかけのオレンジ」みたいに妙に楽しく見えてしまうのが困るところでもあり、怖いところでもある。
焼酎をあんな風にストレートに飲ませたら、生理的に受け付けずに吹き出してしまうだろうから鼻をつまんで無理やり飲み込まざるを得ないようにしないといけないのではないか、とは思った。

殺す老人たちを先祖から受け継いだ財産を無駄にしているから保険金という形でいただいていいのだといった意味のことをリリー・フランキーの「先生」が言うわけだが、山田孝之の記者の認知症の老母の世話を仕事が忙しいと池脇千鶴の奥さんに全部押し付けているのとパラレルになっていて、人の命を金銭に換算する、換算できないものは無視するのが保険金だけの話ではないと思わせる。

「深淵を覗くならば、深淵も等しくおまえを見返すのだ」というニーチェの「善悪の彼岸」をもろに思わせる面会室の構図。
あるいはいったん記者の主観を離れて(その離れるところで、現在の記者の姿と過去の殺人場面が同じフレームに収まっている)犯行の経緯を追った上で、ふっと「先生」が自分にカメラを向けている記者に気づいて見返す、という見るもの見られるものがくるりとひっくり返るのが、記者にとって犯人たちが深淵になっていることをうかがわせる。
(☆☆☆★★★)

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