ベトナム系のトラン・アン・ユンもそうだが、コンモポリタンな育ちでフランス映画界を根城にしているアジア系の映画人が自国(?)を半分外から、半分中からの視点で描く映画というのは美的に精錬されている一方でなんだかイヤミな感じを免れない。
文化大革命当時に僻地に下放されてモーツアルトやバルザックといった西洋的な教養を見せると命に関わる境遇でいインテリ青年たちが、現地の少女と恋に落ちて…という話だが、西洋から東洋を、インテリから田舎の少女を、それから男から女を見下すような図になっているわけで、「突然炎のように」風の男二人に女一人の三角関係の爽やかさや、少女の可憐さとイノセンスはそりゃ魅力的だろうけれど、ドラマとすると「上」の拠って立つ立場が結局崩れないのだから、(だからどうしたの?)と思ってしまう。
足踏みミシンみたいな原始的な装置で歯医者のドリルを回して村長の虫歯を治療するあたりは野趣のあるユーモアがあってよかったが。
(☆☆☆)