原題はmaligia イタリア語で「悪意 意地悪 悪知恵」などの意味。
きちんと通して見ないでなんとなくイメージでわかったつもりでいて実見したらイメージと違うということは、ままあるけれど、これもそう。
少年が年上の女性の手ほどきで筆おろしする話だと思っていたら、そうには違いないけれど色々微妙にそれとはズレている。
先に続編だけ先に見ていたせいも大きいだろう。こちらははっきり艶笑コメディだったと記憶する。
主人公の少年というかガキが相当に年上の女(女中さん)に対して意地悪なのだね。原題の意味はこちらにかかるのではないか。サルヴァトーレ・サンペリ監督はのちにフランコ・ネロ、リザ・ガストーニ主演の「スキャンダル」を撮っているが、こちらの方は男が大人になったせいかもっと悪意と性と政治性がはっきり出ていた。
父親に代表されるブルジョワたち、司祭などの俗物性に描き方は辛辣。スケベな本性をなんだかんだ言って隠蔽する。
クライマックスで明かりが断続的に点滅するのが身分の上下関係が断ち切られる象徴になるのも「スキャンダル」で繰り返していた。
父親と息子が同じ女性を分け合うという、これも一種の親子丼なのだからずいぶんアモラルといえばアモラルな話。パゾリーニの「テオレマ」をもう少しとっつきやすくしたような感じもする。
ラウラ・アントネッリがすこぶる魅力的なのは、今見てもそう。
ヴィットリオ・ストラーロの撮影がやたらと素晴らしい。舞台になるブルジョワ家庭の調度品のモダンな贅沢さといい「暗殺の森」みたいな画面。ブルジョワっぽさを出したいのでストラーロに頼んだような気さえする。