prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ハンティング・パーティ」

2009年10月03日 | 映画
出だしのリチャード・ギアのテレビレポーターの職場ボイコットから、酒飲んで騒ぐジャーナリストたちのガラの悪さ(しかもエンドタイトルによると本物が四人も混ざっているらしい)、さらに世にもふざけた取材兼賞金稼ぎ旅行と、深刻なバルカン情勢の悲劇が喜劇的なタッチと混ざりくるりくるりと虚実皮膜という感じで描かれ、対象にコミットしてはいけないというジャーナリズムの客観主義的「ルール」も、いとも簡単に反故にされる。
戦争犯罪人がFOXと異名をとっていて、しかも当人が狐狩りを楽しんでいるという二重構造で「嘘」を意識させ、返す刀で国際社会やジャーナリズムの建前を切って捨てる。

国際紛争に陰謀論というのは必ずつきまとうものだけれど、その主体をわかりきった大国とか組織とかにしないで、ケチなジャーナリスト三人組にしてしまった作りが大胆。だからDVDにつけられた「CIAの陰謀」という物欲しげで古臭い副題は、完全に作品の方向を裏切っている。
ラストの展開などご都合主義というかノーテンキというか、そんなことあるのかと思わせる一方で、陰謀論の事大主義と知ったかぶりを逆に衝いている。少なくとも「闇に葬られる」のなら、こういう奴が葬られた方がいいものね。

もちろん裏には悲惨きわまる現実があるわけだが、その悲惨さに対してジャーナリズムとかそれを通してしか物を知ることのできない者たちにとって、結局は「他人事」にしかならないのを、今さら深刻めかさずに踏まえている。

監督のリチャード・シェパードは「アグリー・ベティ」の第一話を担当した人だとのこと。納得。
〝I Knew It Was You: Rediscovering John Cazale〟というジョン・カザールのドキュメンタリーも撮っているらしい。気になります。
(☆☆☆★★)




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