昔懐かしい芸術ポルノといった風情。
当時の24歳のシルヴィア・クリステルの黒づくめの古典的な娼婦スタイルがセクシーかつ美しい。
エマニエル夫人だと映画の視点は女に置かれているけれど、ここでは男の幻想と現実の間を行き来していて、原作のアンドレ・ピエール・ド・マンディアルグは「オートバイ」「城の中の英吉利人」などエロティシズムと現実とイマージュの混淆を描いていた人だけれど、映画だとどうも曖昧模糊とした印象が強い。
ただし、ラストで娼婦の側でぱっと現実に戻るのは醒めた感じでよろしい。
監督のヴァレリアン・ボロズウィックはポーランド出身で「インモラル物語」「獣人」などの芸術ポルノで有名だった人。今見るとヘアが見えるといった刺激や革新性というのはずいぶん色褪せていると思う。あまりかちっとした画を作らず、モノそのものの質感量感にカメラが向いているといった演出。
エルトン・ジョンやピンク・フロイドなどのポップスがあまり画面と関係なく流れ続けているのがまた眠い。