prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「レッド・バロン」

2011年05月29日 | 映画
複葉機、という宮崎駿が好きなクラシックタイプの飛行機を扱っているのだが、はっきり宮崎作品とは描き方に違うところがある。飛行機が「飛び立つ」映像がないことだ。「コンタクト」という合図があって整備兵がプロペラを回し草原を滑走して飛び立つ、というおなじみといっていい場面がない。
最後に飛び立つ場面では「コンタクト」という声だけは聞こえるが、主人公のアップだけで終わってしまい飛ぶところすら見せないのだから、どうも意図的なのではないかと思える。

最初に飛んでいる姿を見せるのは撃墜した相手の葬式に追悼の文句を書いたリボンを投げ込む場面で、撃墜した相手に敬意を持ち続ける古きよき騎士道的態度といった感じ。さらに撃墜した相手が遠縁にあたることが語られ、第一次大戦で空を飛べたのは貴族階級だけで、ヨーロッパの貴族階級は国こそ違え、みんな親戚同士みたいなものだとわかる。

とうぜん、地べたを這いずり回っているのは平民で、最初のうち複葉機同士の空中でのドッグファイトを描いていたのが、最後の方になると地上の兵に爆弾を降らせるのが飛行機の役目になってくる。
これが第二次大戦前夜のゲルニカの爆撃では兵士どころか一般市民に爆弾を落とし、しまいには原爆まで落とすことになる。
飛行機が騎士の乗り物から「汚い戦争」の担い手となるのに沿った描き方ということになるのだろう。
その分、複葉機の雄姿を見せるという意味では尻つぼみ気味。

もっとも、一応平民の代表者が看護婦だけ、というのはジョセフ・ファインズのイギリスの飛行機乗りとの三角関係未満はあるにせよ、薄味。
毎度のことながら、主にドイツとフランスの戦いを描いているのにセリフが英語、というのは違和感バリバリ。
(☆☆☆)




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