prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「カラミティ」

2021年09月29日 | 映画
カラミティというタイトルからカラミティ·ジェーンを扱った映画なのはわかっていたので、始まって聞こえてきたのがフランス語なのはちょっと驚いた(フランス ベルギー合作)。
日本語吹替版もあったが、時間の関係で字幕版を見た。

輪郭線のない、面の塗り分けだけで表現された画が日本製のまず輪郭線ありきになりがちなアニメの画に慣れされた目には新鮮に写る。
色の塗分けだけで光の感じや空間の広さまで表現してしまうのだから、こういうことができるのかと驚いた。

カラミティ·ジェーンといっても名前は知っていても正直あまりイメージがなくて、西部劇ショーでワイルド·ビル·ヒコックと組んだ男装で馬を乗り回し銃を撃つ姿の印象しかなかったわけだが、それを今風のフェミニズムを通して語りなおした。
というか、もともとそういうイメージは自己宣伝とホラの産物みたいなものだったらしい。

それほど特別なことではなくて、女の子はスカートをはかないといけない、馬に乗っても馬車のたずなをとってもいけない、とにかく男を立てろといったバカげた開拓地ではジャマにしかならない決まりを破るのだが、銃に関しては抑え気味。
気が強くてばんばん自己主張するのが何よりのキャラクター。

同様にちょっと出てくる先住民たちもまったく口をきかないといった具合に扱いに慎重な様子。
西部劇のマッチョな勧善懲悪的な図式から離れようとしている。

監督のインタビューでも、はっきりした悪人は出さないようにした、ヒロインに厳しくあたる開拓団長にしても未開の厳しい自然の中で緩いことは言っていられないからだし、しきりと意地悪してくる男の子もよくある実はジェーンが好きな裏返しが混ざっているのがわかる。はっきり悪役だと思わせるキャラクターも出番自体を減らして締めくくりに工夫を凝らしている。

開拓団の男たちのリンカーンみたいというかアーミッシュみたいな髭と帽子の格好からコアなプロテスタントだとわかる。

しかしフランス語を話しているところからアメリカに渡ったフランス系の植民地を経営するような移民はどんな歴史をたどったのか、南部に痕跡を残しているだけに興味をそそられた。