prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ビバリウム」

2021年03月20日 | 映画
サバービア(郊外)の画一的な大量生産の住宅街は「シザーハンズ」で見るように中産階級の生活のシンボルなのだが、その人工性と画一性を極端にしたような寓話的であると同時に妙に生々しい不気味さを持った世界観の造形が面白い。
ウルトラセブンの「あなたはだあれ?」に出てきた団地全体が侵略者の基地に入れ替わったみたいなテイストもある。
マグリットの絵のような町の風景の色合い、特に雲の形。

どうしても脱出できない設定という点ではブニュエルの「皆殺しの天使」を、「子供」が発する奇声は「SF ボディスナッチャー」をちょっと思わせた。
主人公の若夫婦が住む家が9番というのは「プリズナーNo.6」を上下逆にしたものか。

生活して子供を育てて死んでいくといった一生を極端に凝集しているわけで、見終えてしばらくすると寓意があからさますぎる気もしてくるが、才気まんまん。

屋根に書いてある四文字語をFUKUとスペルを間違えているのはアメリカの市民的常識に反するということか。

ロルカン・フィネガン Lorcan Finnegan 監督のFOXESという短編をYouTubeで見てみると、同じようにイギリスの画一的な中産階級向けテラスハウスの住宅街を舞台にしているのがわかる。フィネガンという名字からしてアイルランド系だろうか。

ベルギー、デンマーク・アイルランド合作。映画本編が始まる前の製作会社のタイトルがやたら多くて、目ぐるましいほど。