「CUBE」ばりに閉ざされた抽象的な空間で一定のルールが設定される。
この場合は何百もの上下に重なったコンクリート張りの階層があって、部屋の中央に四角い穴が空いており、その穴にぴったりはまる大きさのテーブルがときおりエレべーター式に御馳走の食べ残しを乗せて降りてくる(どうやって宙に浮いて上下するのかはわからない)。部屋の住人がその食べ残しを食べ、一定時間が経つとテーブルがまた降りていく、というもの。
あからさまにいわゆる格差社会・あるいは社会の階層を図式化した設定といっていいだろうが、その図式化・抽象化の造型が意外と不徹底だったりする。
早い話、主人公が眠っている間に上の階に行ったり下の階に行ったりするらしいのだが、どういうルールでそうなるのかわからないし、第一絵面がまるで変わらない(限られたセットを使い回ししたには違いなかろうが)ので、上がったのか下がったのかピンと来ない。
食べたからには出す方はどうなっているのだろう、トイレらしい施設はないし、と疑問に思っていると、一応そういう描写はあるのだが、そうなると上下を貫いて無限に見えるほど連なっている穴が意外と空間造型に役立っていないことに気づいてしまう。
穴を貫いて落ちる物、というのがほとんどないからだ。中には穴に身投げして自殺をはかる住人というのもいていいと思うのだが。
厨房のシーンや、象徴的なセリフや幻想シーンなども出て来るのだが、意味がよくわからず、印象を散漫にしている。
御馳走の汚らしい「食べ残し」ばかりと、これくらい食べ物が不味そうに描かれることもあまりない。
邦題は英語風だが、原題はEl Hoyo=スペイン語で「穴」。スペイン映画で、言葉もスペイン語なのがシネコンで上映されるのは珍しい。