prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ロルナの祈り」

2011年05月10日 | 映画
説明を削ぎ落とした語り口でなかなか設定が見えてこない、ヒロインがどこの出身なのか(解説を読むとアルバニアらしい)、本命の男とは結婚しているのかしていないのか、といった設定が一回見ただけではわからないのはちょっと困るが、それで緊迫感が保たれているのも確か。

初めのうちヤク中の夫をまるで見捨てているのかと思うと、実はベルギー国籍を取得するため偽装結婚しているのに過ぎず、それが「離婚」するために夫に暴力をふるわけているように見せかけるために自傷行為に走り、その痛みが次第に良心の痛みにまで至って、肉体関係を持つシーンに暴れる男を落ち着かせるためというエクスキューズ以上のニュアンスが出る。

ヤク中が死ぬ場面が完全に省略されていて、ふっと姿が見えなくなっただけ、という感じがするのが、ヒロインが妊娠したと主張して医者に否定される「子供」が現実としては幻でもヒロインの中では実在するものとして守ろうとするラストとつながっていて、おそらくオールロケで撮られているドキュメンタリータッチが象徴的表現にまで飛躍している。
(☆☆☆★★)