prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「早春」

2011年03月19日 | 映画
長いことビデオ化もされずWOWOWでやっと見られた一編。
実はテレビ(当時の東京12チャンネルだったか)で見た時は、等身大のヌード女性の立て看板を持ってロンドンの地下鉄をうろうろしたりするのが下手なセックスコメディみたいに思えたのだから、ひどい見方をしていたもの。

その時はなんと白黒テレビで見たのだったが、ヒロインのジェーン・アッシャーの黄色いコート、タオル地のガウンの白、そして冒頭からラストのペンキの赤と、色彩設計が綿密な映画なのが、こちらは見られないでいる期間に山田宏一の文章で触発されて勝手に白黒画面に記憶の中で色をつけていて、これと実際の色彩は当然違うので奇妙なデジャ・ヴに近い感覚を味わう。

主人公の少年が憧れるヒロインが親切かと思うと意地悪になったり、好意を寄せているのかと喜ばせると別の男たちと遊んでいたりするあたりの残酷さが粘っこく、昔よくあった初体験ものの一種と見せて、五つ年上のポーランド監督ポランスキーがやはりイギリスで撮った「反撥」のように性的抑圧を梃子にして商業性と作家性とを両立させようとしているみたい。
ダイヤを舌の上に乗せた口のクロースアップなど、異様な感覚の映像が随所に現れるのが商業映画のルーティンを破っている。