prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「告発のとき」

2008年07月12日 | 映画
CBSドキュメントで、サブプライムローンでホームレスになった人たちの集落で逆さまになった星条旗が掲げられているのを見て反米という意味かと思ったが、そうではなくて救援信号だという国際的に決まった意味であることをこの映画で知る。

イラクの状況や家族の苦悩、新兵が集まらないので前科があっても入隊させる弊害、麻薬汚染など個々のモチーフ自体はテレビなどで知らされているが、ミステリ仕立てで捜査が進展するのにつれ同じ人や組織にもいくつもの顔があることを丹念に多層的に重ねて描けているのが、報道による情報とは違うドラマの強み。山田太一の言葉で、「ドラマとは要約を嫌う人のためにあるのかもしれない」というのを思い出した。
ごくまともに受け答えしている兵隊が、ぼそっと「イラクを核兵器で滅ぼせばいい」などと口走る怖さ。
当然ながら、基地問題というのはアメリカ国内にもあるのがわかる。

捜査の管轄が州警察と軍警察とでやりとりされる、適用される範囲に応じて実質的な意味がまるで変わってしまうのが「法と正義」で、アメリカとそれ以外とでは暴力的押し付けに変貌するわけだ。
エロ・バーのストリップのえげつなさや、女刑事に対するセクハラなんてものではない差別に、アメリカのマッチョ体質の不健康さを見せる。

トミー・リー・ジョーンズの父親が元軍警察で、旅先の安ホテルでも常に軍隊でそうやっていたであろうように靴を磨き、ベッドのシーツをきちんと畳んでいる、その折り目の正しさが、軍ひいては国家が正しいものであってほしいという報われない思いを形にしている。

ただこういうリベラリズム的作品は、どうしても仲間内で頷きあっている感じになってしまい、それ以外の人間を取り込むには力弱いだろう。
(☆☆☆★★)


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